夕陽に変わりつつある寒空を背景に、重機がヨーロッパ風の建物を取り壊していた。ここは金沢市中屋2丁目。壊されているのはゲストハウス型の結婚式場「ヴィラ・グランディス ウェディングリゾート金沢」だ。




ヴィラ・グランディス ウェディングリゾート金沢は2004年にオープン。経営していた会社「かづ美」は貸衣装業を皮切りに事業を拡大し、富山県や福井県にも進出した。しかし、2025年2月、30億円弱の負債を抱えて民事再生手続きの廃止決定を受けた。
解体現場を訪れると、どこか不思議な感じがする。営業時は幸せや思い出があふれた場所だっただろうに、神聖で荘厳な雰囲気の建物が、いざ解体が始まると瞬く間になくなる。なんだか虚しいものだ。
2026年1月6日時点の登記情報によれば、ヴィラ・グランディス ウェディングリゾート金沢の建物は、未だ「かづ美」が保有しているもよう。現在のところ、解体後に敷地をどう活用するかは分かっていない。
参考までに、最近、営業を終えた金沢市近郊のゲストハウス型施設の跡地を見てきた。
野々市市二日市の「ラヴィール金沢」跡地はクスリのアオキになっていた。また、金沢市近岡町の「アーククラブ迎賓館」跡地では、ドラッグストア「コスモス」が開業の準備をしていた。コスモスは春にオープンするらしい。


ドラッグストア自体に悪いイメージはないと前置きした上で言うと、一生に一度のイベントを担ってきた結婚式場の跡地が、日々の買い物を支えるドラッグストアに変わっていく様子からは、時代の移り変わりを強く印象づけられるとともに、地域経済が停滞している象徴のように見えて寂しいものである。
ブライダル市場の縮小傾向は続く
それでは、足元のブライダル市場の動向を見てみよう。
厚生労働省の「令和6年(2024)人口動態統計月報年計」によると、2024年の全国の婚姻件数は48万5,063組で前年よりも増加したものの、ピークだった1970年代と比べて半数以下の水準にとどまった。

一方、矢野経済研究所が発表したレポートによると、ブライダル関連マーケットの市場規模は、2024年時点で1兆8,448億円と見込まれる。これはコロナ禍前の2019年と比べると23%小さい。
上記の厚労省の統計によれば、婚礼件数は2019年から2024年の間に20%減少した。調査主体も方法も違うため単純に比べられないが、婚姻件数よりも市場規模の方が減少ペースが急激に見える。
これは消費者の肌感覚にも一致しているだろうと思う。結婚しても式を挙げない人は増えたし、挙げるにしても昔ほど大規模ではなくなってきている。
葬儀業界は「家族葬」を見つけたが…
同じ「冠婚葬祭」の葬儀業界は、葬儀の小規模化に合わせて「家族葬」という方向性を見つけた。家族葬が「活路」とまで言えるかは分からないが、近年はコンビニより少し大きいぐらいのコンパクトな葬儀場が次々と新設されている。
すると、ブライダル業界でも形式にこだわらないカップルたちに向けて「家族婚」のような提案が増えるかもしれない。
ただ、葬儀は「さすがにやらないと罰当たりかな…」という後ろめたさがあるものの、結婚式をやるかやらないかの判断は、完全に当事者同士の自由に委ねられている。同じ冠婚葬祭でも状況に大きな差はありそうで、業界の今後の行方が注目される。

