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「複合施設案が浮上」と喜んで報じる新聞を読んだガッカリ感

2026年2月1日、地元の新聞が老朽化した百貨店一帯の建て替え計画について「複合施設案が浮上」と嬉々として報じているのを見て、筆者は朝からガッカリした。

報道によれば、百貨店一帯をホテルとマンション、商業施設を備えた「複合施設」にするらしい。「完成すれば人の流れが変わる」みたいな関係者のコメントまで載っていた。

テンプレの再開発プラン

「ホテルとマンション、商業施設の複合施設」は、近年、全国に乱立している。見た目は「都会っぽくてキレイ」だけど、大きさも内容も中途半端で、その土地にある必然性を感じない。

金沢市や富山市の街並みを頭の中に描くと、そういう建物や計画がいくつか思い当たるはず。どれか一つでも「あそこは成功例だよな。真似したい!」というものがあるだろうか。

筆者が考えるところ、複合施設というのは、要はターゲットや利用シーンを絞り切れず、保険であれこれ詰め込んだ消極案である。

つまり、商業施設が振るわなかった場合の保険として長期契約のホテルを設け、売れば一気にコストを回収できるマンションを抱き合わせる。で、それぞれの一角に、とってつけたように“地元密着”コーナーがお目見えする(工芸品の紹介パネル、茶屋の格子をイメージした内装……)。

東京のゼネコンにテンプレートの再開発プランをマイナーチェンジしてもらい、それを「これなら失敗しない」と説明され、ありがたがる。そんな「及び腰」の施設が、本当に現代の消費者に響くだろうか。そうは思えないのが正直なところだ。

「歴史を重んじる」?

ひと昔前、とくに地方の人びとは、何をするにも選択肢が身近なものに限られた。情報源はマスコミくらいしかなく、休日の買い物場所は百貨店くらいしかなく、レジャーは近所の……と行動パターンが限られていた。

でも、いまはインターネットがあり、物流網が発達し、北陸にも新幹線が通り、空港が整備されたおかげで、自身の趣味趣向に100%フィットする選択肢を手軽に堪能できる。そんな時代に人気を集めているのは、そこにしかないオリジナルなコンセプトに支えられた尖った施設だと思う。

オリジナルさを出す簡便な方法に、既にあるものを活用することがある。たとえば、郵便局や銀行、役所だった建物が別の用途にコンバージョンされる例は多い。もちろん、ただベッドを置くだけでなく、以前の記憶を残した形で「市長室に泊まる」「金庫室で酒を飲む」のように、うまくオリジナリティを表現している。

金沢は普段「歴史や伝統を重んじる」スタンスのはずなのに、こういう転換が苦手に見える。個々の事業者では趣深い取り組みがいくつもあるが、大きなプロジェクトとなると、なぜかスクラップ&ビルドの思考が根強い。で、何だか見覚えのあるようなビルがまた増える。

市場の変化から目を背けて

その原因の一つと目される地元紙は、基本的に市場動向に目を向けず「自分たちは“マス”相手だから」と強弁し続けている。「良いものを作る」と言いながら、誰にとってどんな機能を果たせば「良い」と言えるのか、という肝心の定義付けを曖昧なままにしてきた。

結果として、マス・マーケットがなくなってきていることにすら気付けなかった(一部の人は気付いても見て見ぬフリを決め込んだ)。

消費者のニーズが「柔らかめのタマネギ、つゆだくの牛丼に半熟卵を乗せて食べたい」「あっさり系で柑橘っぽい香りがして、固めに茹でたパスタがほしい」と多様化しているのに、「俺たちは“みんなに良い商品”を供給する。この良さを理解できない奴はバカ」と、いつまでも幕の内弁当一本で勝負する感じだ。

私(元新聞記者)の経験想像で言うと、新聞社内には前例踏襲の空気が蔓延しており、市場の変化を見つめる雰囲気は皆無に等しい。

編集部局が見ているのは第一に「社内の上層部」、第二に「スポンサー≒取材先」、ようやく第三に「読者」で、非読者を含む市場全体は眼中にない(そうではない新聞社もあるとは思うが…)。

その閉じた世界線で求められるのは「良い幕の内弁当」オンリーで、若手社員が「流行の二郎系ラーメンを試作してみました!」と息巻いても、ひたすら「失敗しない」を是として首をつないできた上司は「いいから、余計なことをするな」と封殺する。

冒頭の記事中でコメントしている「関係者」が実在するかどうかはともかく、取材で相手が言ったことをただただ肯定するため、肉付けらしき作業を施し、やたらと大げさに取り上げる。そして「消費者」は辟易とする。その流れが伝統芸化し、重んじられている。

いっそ近江町市場を拡張する、とか

さて、ニーズが個々人にカスタマイズされて極端に多様化し、それでも充足され得る現代、これから施設をつくるなら、基本的には機能を絞って潔いスタンスをとるべきだろう。

たとえば、せっかく向かいに近江町市場があるんだから、上層階はホテルで1階のみ市場で購入した食品を持ち込んで調理してもらえるレストランを設け、宿泊客と外来客が触れ合えるようにする。

さらに踏み込んで、新ビルの1階を近江町市場の別館と位置付け、小売り店と飲食店、屋内バーベキュー場にするとか。

半分はインバウンドをターゲットにした「食のエンターテイメント施設」にしても良いかも知れない。急増したインバウンドはそう簡単に減らないだろうし、とりわけ国内客の少ない平日はインバウンドの存在感が大きい。和服を着て巨大いけすから魚を釣り上げ、その場で板前さんに刺身の舟盛りにしてもらう、とか。

そうすると、近江町いちば館の立ち位置が難しくなるので、いっそオフィスか市場直結の料理旅館に転用してしまうとか。周辺住民の日常的な利便性が著しく下がるというなら、地下はスーパーや身の回り品を売るフロアにする、とか。

急に面白いアイデアが出てこなくて恐縮だが、あの場所の歴史や風習を調べれば、オリジナルなアイデアはまだまだあると思う。そこにしかないものに、人は惹かれる。どこにでもあるような再開発ビルがまた金沢に増え、数年して閑古鳥が鳴く状況に陥り、エリア自体が地盤沈下したような空気感になるのは避けてほしいところだ。

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