クスリのアオキホールディングス(HD、白山市)は2021年10月1日、本来なら同日を予定していた2022年5月期第1四半期の決算発表を、突如として延期した。
上場企業の多くはあらかじめ決算発表日を公表し、株式市場が閉まった午後3時や同3時半ごろに公表するのが普通だが、同社は今回、午後7時を過ぎても音沙汰なし。インターネットの株式掲示板では「かなり悪い内容だから、ニュースにならない金曜の夜を狙って発表するのでは」「買収されるんじゃないか」との憶測も流れた。
上場企業の開示情報が発表される「TDnet」に同社の情報がアップされたのは、なんと午後7時38分。タイトルは
「2022 年5月期第1四半期決算発表の延期に関するお知らせ」
延期??予想外の内容である。
開示資料は難しい言葉が並ぶのだが、内容を要約して平易に言い換えると、以下のようになる。
9月下旬、経理システムに不具合が起こり、財務諸表の計算が合わなくなった。今は計算も合うように直せたが、正誤を検証しなければならない。もしかしたら大きな間違いがあるかもしれないから、追加で公認会計士のチェックを受けないといけないので、今日は公表できない。また今度ね。
これは株主への裏切り/約束は守るもの
上の文章を初めて読んだ時は「株主、投資家をナメるなよ」という怒りを覚えた。
「決算ギャンブル」という言葉がある。投資家にとって、株式を保有したまま決算という不確定要素を迎えるのは、それほど心理的ストレスが大きい。売り抜ければ楽なのに「ギャンブル」に臨むのは、仮に失敗しても仕方ないと思えるほど、その会社を信じているからだ。だから、当日は決算発表は今か今かと落ち着かない時間を過ごす。
この点、アオキは「こんなに夜遅くまで最善を尽くしたが、間に合わなかった。だから許して」ぐらいの感覚かも知れない。だが、これは株主への裏切り以外の何ものでもない。
「9月下旬」には幅があるが、数日前にはシステムエラーが分かったはず。その時点で予定日に間に合わない可能性があることぐらい、小学生でも予期できる。なぜ、無言を貫いたのだろうか。
もしかしたら、クスリのアオキは、上司が部下に仕事を任せ、その部下が締め切り日の夜遅くに「実は途中でトラブってて間に合いませんでした。てへぺろ」と言ったら「うん、よく頑張ったな」と褒める会社なのだろうか。それは優しい組織ではなく、緩んだ組織だ。普通は「なぜトラブルが起きた時に事前に知らせなかったんだ!」と叱る場面である。
名探偵コナンの逆
現在のところ、決算の公表日は未定で「決定後速やかに」教えてくれるそう。もっとも、今日の例を見るに「速やか」の意味を理解しているのかは怪しいが。ちなみに、午後8時半には「四半期報告書を財務局に提出する期限を、本来の10月4日から11月4日に延ばしてもらえるよう申請した」という開示資料も出ている。
がっかり、というか、呆れてモノも言えない(けっこう長文で言ったけどね)。
もしも社員の方がこの記事を読んだら、事の重大さを胸に刻んでほしい。エラーは仕方ない。問題は、トラブルが起こって約束が守れないかもしれないのに、それを事後報告で済ませられると考える姿勢・体質だ。東証1部の上場企業なんでしょう?
昔、知人が「クスリのアオキは体だけ大きくなって、頭は子どものまま」と言っていた。今回の対応を見る限り、残念だが、同意せざるを得ない。