【独自】スギ薬局、北陸進出から5年半で初めての退店/金沢・近江町店を22年11月末に閉店へ

【独自】スギ薬局、北陸進出から5年半で初めての退店/金沢・近江町店を22年11月末に閉店へ

2022年11月8日

スギホールディングス(HD、愛知県大府市)は2022年11月30日、金沢市下近江町の「スギ薬局 近江町店」の営業を終了する。スギHDが北陸3県に進出した2017年2月以降、北陸の店舗を閉めるのは初めてとなる。

近江町店は近江町市場の北側「市姫神社口」にある。立地は「近江町」交差点の角地に当たる。

続報は以下のリンクから

【独自、続報②】スギ薬局の後釜はスギ薬局/金沢・近江町市場の近く、半年前に撤退したビルに再出店へ

※2023年5月2、3日に赤字部分を追記しました 北陸3県であちこちにドラッグス…
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オープンから2年弱の「スピード閉店」

11月30日は18時に営業を終了する。

近江町店は2021年1月7日にオープンした。つまり、開店から2年弱という短期間でのスピード閉店ということになる。

さすがに営業期間が短すぎないか。「これは何かあるぞ」と思い、スギHDの広報部門に電話してみた。

「すみません、個別の店舗の事情までは即答できかねます…」。約1,500店を抱えるんだから、そりゃそうだ。何とか「特別な事情は聞いておらず、店舗網見直しの一環だろうと思う」とは話してくれた。

「24年2月に北陸100店」の目標は堅持

スギHDは2021年3月~22年2月の1年間、全社で新たに112店を出店した一方、20店を閉めた。5、6店を出す間に1店を閉じるペースだ。スギHDが1,483店(22年2月末時点)を有していると考えると、退店自体はそれほど珍しいことではない。

もっとも、スギHDの中で北陸は本格的に開拓を始めたばかりのエリアで、比較的新しい店が多い。スギHDは2017年2月、福井県内に1号店を出して北陸3県に進出し、19年10月に石川県内に進出したところ。

北陸3県での店舗数の変遷は以下の通りだ。

 福井県  石川県  富山県  北陸3県
2017年2月末1001
2018年2月末4004
2019年2月末7007
2020年2月末85013
2021年2月末1017734
2022年2月末15241554

上の表を見ると、急速に店舗数を増やしていることが分かる。まとまった空き地ができると、すぐに「スギ薬局 近日オープン」の看板を見かけた記憶を持つ北陸の住民は多いはず。

ここにきて近江町店が北陸初の退店事例になるわけだが、スギHDの広報担当者は「出店計画を見直したわけではない。2024年2月に北陸で100店まで増やす目標に変わりはない」と話した。

背景に 近江町の変質&自社競合??

さて、それでは筆者なりに近江町店閉店の背景を分析してみる。

そもそも、ドラッグストアは一部でインバウンド(訪日外国人旅行者)による需要もあるものの、基本的には近隣住民が主な客のはずである。

そこで、まず考えられるのは「近江町市場」という場所が地元住民から縁遠くなっており、その結果として近江町店の売り上げが伸び悩んだ可能性である。

筆者の記憶によると、2015年の北陸新幹線金沢開業前の近江町市場では、石川県産ズワイガニの雄「加能ガニ」のうち、足が1本ない「足折れ」は1匹5,000円ぐらいから買えた。

ところが、新幹線開業後に近江町市場を訪れると、だいたい2、3倍に高騰していて、さすがに手が出ず帰ってきた。もちろん、足がそろったカニは「数万円〜」の値段だ。

しかも、そこら中の店に「イートインコーナー」ができた。3,000円を超えるような「観光客価格」の海鮮丼店も増えた。

そりゃ、地元住民は寄り付きにくくなるはずである。


第2に、自社競合(カニバリゼーション)が考えられる。

北陸で「後発組」に当たるスギHDは、ライバルの店舗網が手薄だった市街地へ大量に出店した。近江町店の近くにも、武蔵町の「武蔵町店」、大手町の「金沢大手町店」がある。

スギ薬局の武蔵町店

さすがにここまで近接すると、自社の店舗同士で客を取り合うこともあったのではないか、と筆者は邪推している。

ちなみに、上の写真の通り、武蔵町店には駐車場もある。やはり北陸でドラッグストアがそれなりに人を集めるには「駅ナカ」などの店舗を除けば、駐車場はほとんど必須ということだったのだろうか、とも感じている。


やや大げさに書いてきたようだが、今回の退店は意味が大きいと思う。

それは北陸のドラッグストア市場の現状が、これまで「押せ押せ」で高速出店してきた後発組ですら店舗網の見直しを迫られる厳しい環境になりつつあることを示唆する可能性があるからだ。

もちろん、高齢社会で もうしばらくは市場の成長が続くだろう。ただ、ドラッグ各社のチキンレースにも少しずつ終わりが近付いているのは間違いない。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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