2023年2月、オリックス不動産投資法人からフージャースコーポレーションへ売却された金沢市香林坊2丁目の賃貸マンションが、一棟リノベーションを経て、分譲物件に変更されることになった。
※1年前に書いた初報は以下のリンクから
物件は14階建てで、2006年11月に完成した。「KOKO HOTEL Premier 金沢香林坊」の向かい、香林坊大和の斜め向かいの立地にある。
「分譲を賃貸に」の流れと逆方向の「賃貸を分譲に」
この物件はもともと「金沢香林坊マイアトリア」や「クロスレジデンス金沢香林坊」という名称で賃貸マンションとして活用されていた。
直近はオリックス投資法人が所有していたが、近隣に分譲マンションが多く建設されて分譲マンションを賃貸に出す「分譲賃貸」の例も増える中、所有物件の競争力が低下すると見越し、フージャースコーポレーションに売却した(※経緯は上記の過去記事を参照)。
今回、フージャースコーポレーションは「分譲賃貸」とは逆に、もともと賃貸マンションだった物件を分譲マンションに作り変えて「The Court 香林坊」とする。
入居は24年2月、価格は3,598万~8,998万円
計画によると、大規模改修工事を経て入居できるのは2024年2月下旬となる。店舗を除く住戸は80戸で、このうち第1期第1次の販売価格は3,598万~8,998万円(間取りは1DK、1LDK、2LDK、3LDK)。近隣の新築分譲マンションの販売時と同じぐらいの価格だ。
2023年4月8日に現地を訪れてみると、百万石通りに面した部分は特に変化がないように見えた。一方、建物の南側、小路沿いにある住居部分の入り口では、改修の工事が既に始まっていた。
販売に際しては「香林坊で唯一の邸宅」として提案する。周囲には香林坊交差点近くの大和ハウス工業の新築分譲マンションなどが複数あるが、それらは住所で言うと「片町」や「柿木畠」になるため、香林坊で唯一の存在というわけだ。
筆者は売れ行きに興味津々
この取り組み、筆者は外野から興味深く眺めている。
以前のコラムに書いた通り、香林坊を中心とした旧市街地は総論として街のグランドデザイン(方向性)がない。各論でのみ最適解となるような開発がバラバラに進んでいる。
新幹線時代を迎え、にぎわいや機能はどんどん金沢駅前に吸い取られた。残ったのは「まちなか」というプライド、求心力を失いつつある百貨店、中途半端な商業施設…。久しぶりに旧市街地を歩くと、1階すら空いた老朽ビルの多さに、あらためて衰退ぶりを実感した(一方、竪町が健闘しているのも印象的だった)。
聞くと、金沢駅前の分譲マンションは県外出身者の購入も多いが、旧市街地は地元住民の比率が高い傾向がある。活気が失われる街の様子を見続けている地元住民のうち、決して安くはないリノベ物件を買う人が結構いるのか?そういう意味で、関心をもって推移を見守りたい。