「森のたまご」などのブランドを持つイセ食品(東京)の創業家出身で、グループ中興の祖とされる伊勢彦信氏が、破産手続きの開始決定を受けたことが分かった。
伊勢氏は1962年にグループのイセ(高岡市)の代表取締役に就任。1971年にはイセ食品の代表取締役社長に就き、1992年に会長に退いた。グループの事業規模を飛躍的に拡大させて「エッグキング」の異名をとり、美術品の収集家としても有名だった。
ところが、2021年6月にイセ食品の代表取締役だけでなく取締役からも外れ、前後して自慢の美術品をオークションに出品して財産を整理していた。
イセ食品の役員を退いた理由について正確なところは定かではないが、当時の報道では伊勢氏によるワンマン経営が続く中、伊勢氏の所得隠しも発覚しており、銀行団との間に深い溝ができたと言われていた。
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上場企業の取締役を退任
伊勢氏は2024年1月17日付で、Shinwa Wise Holdingsの取締役を退任した。
同社は美術品のオークションなどを手掛ける上場企業。伊勢氏はもともと筆頭株主で、有価証券報告書によると、2020年3月から取締役会長に就いていた。
東京新宿法律事務所のホームページによると、会社の取締役が自己破産すると、法律上は委任契約が終了するために退任する必要がある。伊勢氏がShinwa Wise Holdingsの取締役を退任したのも、破産手続きの開始決定がなされたからだという。
伊勢氏の保有株式は他者へ譲渡を進めていたが、まだ完了していない。破産手続きの開始に伴い、今後は裁判所から選ばれた破産管財人による管理に移るという。
イセ食品は「たまご&カンパニー」に
さて、イセ食品は1912年創業、1971年設立の会社。2022年3月に東京地裁に会社更生手続きの開始決定を受けた。帝国データバンクの当時の調査によると、イセ(高岡市)と合わせた負債総額は計453億円だった。
2024年2月、イセ食品は「たまご&カンパニー株式会社」に商号を変更し、名実ともに新たな一歩を踏み出す予定となっている。
伊勢氏は1929年5月生まれの94歳。一時代を築いて晩年に会社が潰れ、社名が変わり、自身も破産するとは思わなかっただろうなあ…。