訪問看護に関する診療報酬の不正請求があったサンウェルズ(金沢市)は2025年2月12日、不正の調査のために延期してきた2024年9月中間期決算を発表するとともに、2025年3月期の業績予想を下方修正し、6億4,500万円の最終赤字に転落する見通しを示した。
※筆者としては、以下の記述はあくまでサンウェルズ自身の決定・発表がベースで、これと別に国や東京証券取引所、株主が動くとみられるので、これからの動向には引き続き注意が必要と考えます。
国への返還金については、実際の金額がどうなるか分からないため、ひとまず先日の特別調査委員会による報告書を基に負債を計上した。2025年3月期の業績予想は不正の調査費用など6億6,400万円を第3四半期の特別損失とする影響から、最終赤字を見込んだ。
2024年9月末時点の純資産は、自己株式の処分によって半年前から2倍近くに増えて97億円となっている。
役員の処分では、苗代亮達代表取締役社長は留任し、長山知広専務取締役と越野亨常務取締役が2月13日付で執行役員に降格。ただ、長山氏は経営戦略本部長、越野氏は運営本部長を引き続き務める。また、上野英一常務取締役管理本部長は「常務」が取れてヒラ取締役の管理本部長となる。
異動を伴わない処分としては、苗代社長を月額役員報酬の50%減額(6か月)、上野氏を月額役員報酬の30%減額(3か月)、社外取締役・常勤監査等委員の山本英博氏を月額役員報酬の10%減額(1か月)とする。
(筆者としては、特別調査委の結論「経営陣は制度に疎く、不正を知るチャンスはあったが、関与してない」を真に受けるなら、特定の役員のみ降格させるのはよく分からないし、そんな陣容なら、再発防止策うんぬんの前に役員の入れ替え、少なくとも担務変更は必要だと思うが…)
サンウェルズの問題を巡っては、福岡資麿厚生労働大臣が2月12日の会見で「訪問看護ステーションに関する指導・監査については(中略)医療保険の不正請求の疑いがある場合には、健康保険法に基づいて地方厚生局において必要な指導監査を行い、不正請求が確認された場合には厳正に対処する」と話している。
決算訂正の影響は…
それでは、サンウェルズの決算訂正を基に、過年度の実績を見てみる。売上高、営業利益、純利益を対象に、訂正前後の違いをグラフ化してみた。

次に利益の状況。左軸の棒グラフが金額で、右軸の折れ線グラフが利益率。純利益は2025年3月期の修正後予想が赤字なので利益率を表示できない。


修正による影響は利益面で大きい。2025年3月期に最終赤字となるのは一過性の影響が大きいとしても、再発防止策関連のコストは今後もかかるし、不正請求による上乗せ分がなくなると、純利益率が恒常的に5%を下回りそうな感じである。
これから厚労省や東証がどう動き、株価がどうなるのか。共同通信や週刊誌による続報はあるのか。注目すべき対象は多いが、いずれにせよ利用者が割を食うような状況にならないよう願っている。
【追記】ズレたマスコミ…
サンウェルズの自主的な発表を受け、共同通信社は苗代社長へのインタビューを公表した。ところが、その内容がいかにもズレていて、筆者は読んで吹き出してしまった。
進退について「信頼回復に取り組んだ後、辞任も選択肢として改めて考える」との言質をとった点は評価したいが、見出し「株式の市場区分、変更を検討 不正請求のサンウェルズ社長」や本文「これまでのような高い利益率は上げられないと思う」は、サンウェルズの不正を先頭で追究してきた共同通信とは思えない、ピントのズレ方をしている。
そもそも、世間の関心は組織ぐるみの不正(経営陣が知らない中、全社的に蔓延していたらしい)を起こしたサンウェルズに対し、国や東証が厳しい処分を科すのかどうかという点に移った。
簡単にいえば、不正していたサンウェルズ自身の説明は納得しにくく、上記のように処分内容も場当たり的に見える中、監督する立場にある組織がどう判断するかに注目している。そんな局面でサンウェルズの社長が「自主的に市場変更しようかな」と文章化することに何の意味があるのか、すごく不思議だ。