【2022年2月10日発表の北陸企業の決算まとめ】執念の18社概説 ㊤ 3Q決算を公表した14社

【2022年2月10日発表の北陸企業の決算まとめ】執念の18社概説 ㊤ 3Q決算を公表した14社

2022年2月10日

2022年2月10日は決算集中日。北陸に本社・本店を置く上場企業18社が決算を発表した。当初は一部のみ記事化するつもりだったが、中途半端なのは嫌なので、執念で18社の決算資料に目を通した。

その中で頻繁に出てきたのは「原材料価格の高騰」「世界的な半導体不足」への懸念と影響。多くの企業で業績が想定より回復しているものの、不安材料を抱えながら事業運営している姿が見てとれた。

㊤では2021年4~12月期(第3四半期、3Q)決算を公表した14社(福井銀行、三谷商事、北陸電気工業、中越パルプ工業、トナミホールディングス、松屋アールアンドディ、オリエンタルチエン工業、三谷セキサン、タカギセイコー、シキノハイテック、福井コンピュータホールディングス、大建工業、倉庫精練、川田テクノロジーズ=決算発表順)、㊦では21年12月期(通期)や21年12月中間期の決算を公表した4社(日本抵抗器製作所、伏木海陸運送、日華化学、歯愛メディカル=決算発表順)を紹介する。

福井銀は与信費用増で大幅減益

福井銀行の3Q単体決算は減収で、資金利益や役務取引等利益を含む業務粗利益が微減した中、与信関係費用がかさんで大幅な減益となった。

経常収益コア業務純益純損益
3Q実績25,480(▲1.6)4,414(▲10.3)1,446(▲53.2)
通期予想-( – )2,500(▲51.0)▲800( – )
単位は百万円。カッコ内は前期比増減率=%。▲はマイナス

子会社の福邦銀行は最終赤字で、経常収益が62億6,800万円、コア業務純益が4億9,700万円、純損失が12億3,900万円だった。

不良債権比率は福井が1.42%、福邦が4.03%。自己資本比率は福井が7.88%、福邦が7.47%。2行合算の1貸出金残高(12月末時点)は2兆1,579億円で、9月末から198億円増えた。譲渡性を含む預金残高は3兆3,342億円で、9月末から379億円増えた。

三谷商事は新幹線工事が落ち着くも増益確保

三谷商事(福井市)の3Q連結決算は増益。原油価格の上昇で石油製品の価格が上がり、収益面にプラスに働いた。その半面、北陸新幹線の工事需要が終了して生コンクリートやセメントなど建設資材の販売事業が落ち着いた。

売上高営業利益純利益
3Q実績211,976( – )14,626(6.2)9,375(4.2)
通期計画285,000( – )18,100(▲10.1)11,200(▲10.1)

北電工は黒字に転換

北陸電気工業(富山市)の3Q連結決算は増収で、各損益が黒字転換した。エレクトロニクス市場は米中を中心とした自動車向けの回復や巣ごもり需要の高まりに支えられた。為替は1ドル=112円想定で、現状のレートよりは円高で見ている。

売上高営業利益純利益
3Q決算29,360(27.0)1,502(黒字転換)1,249(黒字転換)
通期計画39,500(20.3)1,800(214.3)1,300(190.4)

中越パルプは通期予想を上方修正

中越パルプ工業(高岡市)は22年3月期(通期)の業績予想を、連結、単体とも上方修正した。原燃料価格や物流経費の上昇が続くものの、販売数量の増加による工場稼働率の改善が収益を高め、利益は前回予想比2割台の上振れとなった。

3Q連結決算は増収で黒字転換した。

売上高営業利益純利益
3Q実績65,850(12.5)1,931(黒字転換)1,190(黒字転換)
通期計画88,500(8.0)2,000(黒字転換)900(黒字転換)

トナミHDは増収増益

トナミホールディングス(高岡市)は増収増益だった。国内貨物輸送量は20年度の落ち込みの反動で増えているが、コロナ以前の水準には戻っていない。EC市場の拡大で物流施設の需給が逼迫(ひっぱく)しているという。今後は原油価格の上昇、労働力不足などが引き続き課題になるらしい。

営業収益営業利益純利益
3Q実績101,837(1.8)6,020(25.8)4,402(31.7)
通期計画140,000(3.9)7,000(8.4)4,500(▲3.4)

松屋R&Dは通期下方修正/ベトナムに20億円で新工場

松屋アールアンドディ(大野市)は22年3月期(通期)の業績予想を下方修正した。前年に特需があった医療者向けガウンに大口受注がなく、コロナ影響でベトナム工場の稼働率が悪化したため。

売上高営業利益純利益
3Q実績3,911(▲18.3)204(▲64.8)71(▲84.4)
通期計画5,600(▲23.0)330(▲60.6)150(▲73.6)

同社は10日の取締役会で、20億円を投じてベトナムに新工場を建設することを決めた。

現在はレンタルの5工場が稼働しており、新工場はその全5工場を集約、効率化する形となる。建設資金は借り入れによって賄うが、現地ではレンタル代金が上がっており、新工場の減価償却費の方がレンタル料よりも安いため、返済は比較的容易な予定だという。新工場は23年9月ごろの稼働を予定する。

オリエンタルチエンは通期売り上げを上方修正

オリエンタルチエン工業(白山市)は22年3月期の売上高予想を引き上げた。国内工作機械向けの受注が堅調で、海外もアジア向けが伸びたため。営業利益予想も上方修正したが、投資有価証券の評価損4,100万円を計上するため、純利益予想は引き下げた。

3Q単体決算は増収で黒字転換した。

売上高営業利益純利益
3Q実績2,434(14.1)67(黒字転換)2(黒字転換)
通期計画3,223(10.0)77(831.9)7(黒字転換)

三谷セキサンは通期予想を上方修正

三谷セキサン(福井市)は22年3月期(通期)の連結業績予想を上方修正した。主力製品のコンクリートパイルの販売強化が奏功した。

売上高営業利益純利益
3Q実績55,477(8.6)5,870(▲2.6)4,359(2.6)
通期計画75,000(8.8)7,000(▲6.6)4,900(▲8.8)

同社は14日朝、東証の自己株式立会外買付取引を活用して最大7万株を取得する。取得価額の合計は上限4億6,900万円。

タカギセイコー、最終損益が黒字化

タカギセイコー(高岡市)の3Q連結決算は増収で、最終損益が黒字化した。成形品事業は車両分野で半導体不足に伴う顧客(自動車メーカー)の生産調整の影響を受けている。

売上高営業利益純利益
3Q実績33,419(29.2)1,903(518.2)665(黒字転換)
通期計画44,820(20.7)2,300(141.9)700(黒字転換)

シキノハイテックも通期見込みを上方修正

シキノハイテック(魚津市)は22年3月期(通期)の単体業績予想を上方修正した。車載半導体検査装置、半導体設計受託の好調が持続しているため。3Q単体決算は増収増益だった。

売上高営業利益純利益
3Q実績3,839(20.0)266(182.2)179(185.4)
通期計画5,300(19.8)348(71.2)244(115.4)

福井コンピュータも上方修正/社長が交代

福井コンピュータホールディングス(福井市)は22年3月期(通期)の連結業績予想を上方修正した。建築システム事業、測量土木システム事業とも新規・既存販売が順調に推移しているという。

期末配当予想を50円から56円に引き上げた。配当は期末のみで、前期(21年3月期)は50円だったため、年配当は6円の増加となる。

売上高営業利益純利益
3Q実績10,670(11.6)4,834(18.7)3,227(17.0)
通期計画13,900(8.2)5,900(13.7)3,910(10.8)

同社は10日の取締役会で、林治克社長が一身上の理由から社長と取締役を退任し、後任に佐藤浩一取締役が就く人事を決めた。佐藤氏は福井市出身の58歳で、青山学院大学経営学部を中退して福井コンピュータに入社。17年11月に福井コンピュータホールディングス取締役に就いた。

大建工業は過去最高益予想をさらに上乗せ

大建工業(本店・南砺市)は過去最高益を見込んでいた22年3月期(通期)の業績予想を、さらに上方修正した。海上輸送の混乱や原材料価格高騰の影響が懸念されるものの、米国の好調な住宅需要を背景に木材製品の市況価格アップが見込まれることを織り込んだ。3Q決算は増収増益。

期末配当予想を50円から55円に増やした。中間45円と合わせると年100円で、前期(21年3月期)の年70円と比べて30円の増配とする。

売上高営業利益純利益
3Q実績167,130(14.0)13,569(119.0)6,790(80.1)
通期計画220,000(10.4)16,000(82.2)8,300(47.7)

倉庫精練は11期連続の通期営業赤字が濃厚に

倉庫精練(金沢市)の3Q連結決算は増収だったが、赤字が続き、通年での11期連続の営業赤字が濃厚になってきた。

同社の場合、売上高から売上原価を引いた粗利益(売上総利益)がマイナスで、損益計算書を見ると「売上総損失」という見慣れない表記になっているほど。そもそもの売り上げを増やすのはもちろん、並行して構造的な見直しを実行しないと、黒字体質の確立は程遠いように思える。

売上高営業損益純損益
3Q実績1,662(12.5)▲293(赤字拡大)▲102(赤字縮小)
通期計画2,250(14.3)▲280(赤字縮小)▲90(赤字縮小)

川田テクノロジーズは通期利益予想を引き上げ

川田テクノロジーズ(南砺市)は22年3月期(通期)の連結利益予想を引き上げた。大型工事の設計変更の獲得や原価改善の結果だという。

5月にグループ創立100周年を迎えることから、期末に記念配当20円を実施する。期末のみの普通配当は前期から据え置きの80円なので、年配当は20円の増配になる。

売上高営業利益純利益
3Q実績78,181( – )5,401( – )3,914( – )
通期計画101,000( – )5,000( – )3,900( – )
国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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