総務省がまとめた2021年分の「家計調査」を詳しく見る企画、㊦は食品以外の品目への支出について、全国の県庁所在都市と政令指定都市の計52都市のうち、北陸3県の県庁所在都市(富山市、金沢市、福井市)が、全国トップ3に入った項目を中心に紹介する。
調査期間は2021年1~12月。今回、当サイトでは2人以上いる世帯が、対象の約680品目に対して年間に幾ら遣ったかをまとめた調査の内容を分析した。
※㊤は以下のリンクから。
「非食品」は範囲が広いので、調査対象の中から、筆者が特徴的だと思った品目のみ抽出した。
福井市民は洋服への出費が全国最少レベル
【洋服】※和服は別
1 さいたま市 73,291円
2 福岡市 63,225円
3 東京都区部 55,691円
9 金沢市 50,114円
22 富山市 42,181円
49 福井市 30,674円
福井市が52都市中49位。金沢と比べると4割ほど少ない。個人差はかなり大きそうだが。
それでは洋服関係の小分類で北陸勢が上位にいる品目を見てみる。
【シャツ・セーター類】
1 金沢市 28,934円
【ブラウス】
3 富山市 3,979円
【子供服】
3 金沢市 7,646円
【男子用ズボン】
3 金沢市 4,335円
【男子用靴下】
1 富山市 1,903円
【腕時計】
2 金沢市 10,323円
子ども向けの出費が比較的多い特徴がありそうだ。
富山市民は目が悪く、洗濯好き??
次に、インテリアや身の回り品を見てみる。
【テーブル・ソファー】
3 福井市 7,315円
【電球・ランプ】
3 福井市 1,232円
【園芸用品】
3 富山市 8,837円
洋服への支出が少なかった福井市は、インテリアにお金を使っているということなのだろうか。
【トイレットペーパー】
3 金沢市 4,694円
【感冒薬(かぜ薬)】
3 富山市 2,288円
【栄養剤】
3 福井市 4,751円
【メガネ】
3 富山市 12,339円
【コンタクトレンズ】
2 富山市 7,516円
3 金沢市 7,183円
富山市がメガネ、コンタクトレンズの両方でランクインした。
そう言われてみると、筆者が富山市で勤務していた際、富山県出身の同業者は、ほぼ全員がメガネをかけていた。取材で出会った経営者も、メガネを掛けている比率が心なしか高かったかも知れない。
この点、筆者の知る限り、石川県内に本拠地を置く目立った地場メガネチェーンはない。しかし、富山県にはある。北陸3県に33店(ホームページより)を展開するメガネのハラダ(富山市)だ。
富山の人が勤勉なのは周知の事実。きっと、みんな勉強のしすぎなのだろう、と思ったら、こんな品目もあった。
【ゲーム機】
1 富山市 8,909円
なぜ、富山市民の目が悪いのか。それこそ、真相は簡単には見えない。
ちなみに、富山県には、北陸3県を中心にクリーニング店316店を展開するヤングドライ(富山市)も本拠地を構えている。「卵が先か鶏が先か」という話になってしまうが、富山市民は洗濯にかける出費も多く、クリーニング市場は大きい。
【洗濯】
2 富山市 6,727円
5 金沢市 5,907円
さらに言うと、富山県には「フィットちゃんランドセル」を製造販売するハシモト(富山市)もある。同社はイオン系のランドセルも手掛けている。
まさか、それが関係しているわけではないだろうが、富山市民はバッグへの支出も多い。
【かばん類】
1 富山市 17,281円
金沢市民は習い事と化粧が好き
よく言われるところだが、金沢市民はお稽古事が好きだ。それは家計調査からも分かる。
【月謝類】
1 金沢市 63,154円
52位(最下位)の和歌山市は15,217円だから、金沢市民は和歌山市民の実に4倍、いろいろな月謝に金をかけていることになる。確かに、街を歩けば文化センターやら何とか教室やらが多い。
小分類では「語学月謝」「スポーツ月謝」が1位、「教養月謝」が3位、「音楽月謝」が6位となった。
このほか、金沢市が上位の大分類では「石けん類・化粧品」がある。
【石けん類・化粧品】
1 金沢市 60,182円
年6万円というのは結構な金額だ。小分類では「シャンプー」「化粧水」が1位、「化粧クリーム」「口紅」が2位、「ヘアコンディショナー」が3位だった。
このほか、金沢市は携帯電話通信料、自動車整備費、国公立中学校の授業料、国公立高校の授業料などでトップ3に入った。
北陸勢が1・2・3フィニッシュの項目も…
㊤では「ふりかけ」への支出で、北陸勢がトップ3を独占したと紹介した。
実は非食品編でも同様に1・2・3フィニッシュの項目があった。それは……
【電気代】
1 福井市 181,814円
2 富山市 174,777円
3 金沢市 167,065円
ただ、北陸電力の電気料金は全国の電力会社でも有数の安さのはず。そうなると、電気代が高い理由は冬場の暖房器具のせいだろうか。でも、暖房需要が冬に高まるのは北海道や東北も同じだ。
例えば、北陸の場合、親との同居率が高く、1軒当たりの面積が広く、人数が多い、といったことも関係しているのかも知れない。
富山市は仕送り額で日本一だが、その原資は……
最後に、お金に関する項目。
【仕送り金】
1 富山 229,862円
富山市が仕送り額で堂々の日本一に輝いた。
調査の注釈によると、仕送り金とは「世帯票に記載のない者への生活費、下宿料、家賃、教育費などの全部又は一部を継続的に補助するための現金支出」ということなので、進学で地元を離れた子どもはもちろん、同居していない親も含むとみられる。
筆者としては「普段は倹約し、ここ一番で『ドン』と気前よく金を遣う富山人」というイメージに合致するので、納得した。
さて、最後に、世帯主の小遣いの話で記事を締めくくろう。
【世帯主のこづかい】
1 堺市 99,909円
…
17 金沢市 73,614円
…
47 富山市 47,421円
49 福井市 42,432円
52 那覇市 31,129円
北陸に住む世帯主の一人として、金沢市はまだしも、富山市と福井市は目を覆いたくなる低位ぶりだ。
しかし、振り返ると、富山市は仕送り額で日本一だったはず。
もしや、息子や娘に人一倍の仕送りをするため、お父さんの小遣いが割を食っているということだろうか。悲しい話のような、温かい話のような…。