オリックス不動産投資法人(東京)は2023年2月1日、金沢市香林坊2丁目で保有する賃貸マンション「クロスレジデンス金沢香林坊」(旧金沢香林坊マイアトリア)をフージャースコーポレーション(同)へ譲渡する。売却価格は35億2,580万円となる。
対象物件は百万石通りに面し、三菱UFJ銀行と香林坊ラモーダの間にある。1階に「ポールスミス」「エンポリオ アルマーニ」が入っているビルと言えば分かりやすいだろうか。
14階建てで、2006年に完成した。間取りは1DK~3LDK。賃貸住宅情報サイトで入居者募集中の部屋を見ると、月額家賃は1DKで8万円、2LDKで20万円。
物件の総賃貸収入(除く駐車場)は月額1,600万円となっている。同投資法人は、この物件を13年に24億1,000万円で取得していた。
つまり、9年前に買った時より11億円高く売れたわけだ。オリックスって商売上手だなあ、といつも感心している(だからこそ筆者はオリックス株を保有している)のだが、今回もその片鱗を見せられた。帳簿価格は20億4,600万円なので、諸費用を引いた譲渡益13億4,500万円を23年2月期に計上する。
ライバル「分譲賃貸」増加/21年11月に「トリー バーチ」撤退
同投資法人によると、最近は金沢エリアに、分譲マンションを賃貸に活用する「分譲賃貸」が増えている。
同物件は賃貸マンションとしては高スペックだが、新しい分譲賃貸と比べると、さすがに築15年の同物件では設備が見劣りして稼働率が軟調だった。今後、競争力が一層低下することを懸念して売却するという。
同物件の直近5年間の稼働率は17年8月末、18年8月末に90%を超えていた。19年8月末に85%へ低下し、20年8月末に84%、21年8月末に83%となった。
素人目には「8割超」は十分に高いようにも映る。しかし、その後の21年11月、女性向けバッグなどを扱うブランドで、1階向かって右にあったテナント「トリー バーチ」が撤退。稼働率はさらに下がっているのかも知れない。
確かに、近年は柿木畠や片町エリアで分譲マンションの建設が続いた。同投資法人の懸念は、地元民として、もっともだと思う。
分譲マンションは賃貸マンションと比べ、住民のマナーレベルが高いと言われる。「大金をはたいて手に入れた住処(すみか)」と「数年間だけの仮住まい」の意識の違いからだ。自分が賃貸物件を探すなら、新しい設備で、よりマナーの良さそうな物件を選ぶだろう。
市街地に分譲マンションが増え、一部が賃貸物件として使われ始めれば、先発の賃貸マンションの旗色が悪くなるのは当然の流れ。
このコロナ禍でテナントビルの市況悪化が続けば、そこが分譲マンションに変わり、さらに賃貸マンションは劣勢になって……という繰り返しが、今後も続くかも知れない。