日本たばこ産業(JT)は13日、10月1日から紙巻たばこ127銘柄をはじめとする173銘柄を値上げすると発表した。同日のたばこ税増税などに対応するためだという。
JTの発表資料によると、7月30日に財務大臣に小売定価改定の認可申請を行い、8月13日に申請通りの認可を受けた。
気になるのは、どの銘柄がどれぐらい値段を引き上げるか、だ。
セブンスターやメビウスは40円引き上げ
代表的な銘柄の改定前後の価格は次の通り。
- セブンスター、ピース 560円 → 600円
- メビウス 540円 → 580円
- アメリカンスピリット 570円 → 600円
- キャメル 450円 → 460円
長男が生まれた5年前から禁煙している身にとって、そもそも驚きの値段だ。いつの間にワンコイン(500円)を超えていたのか。
20年ほど前、筆者が大学に入ったころは、300円を超える銘柄などほとんどなく、大抵は280円前後だった。そこから見れば2倍の金額である。
さて、今回の値上げにより、年間の負担はどれほど増えるのか。例えばセブンスターを1日1箱吸う人は、1万4600円増の21万9000円である。こう見ると、1万4600円増というのもさることながら、年間の出費が20万円を超えることに、あらためて考えさせられる。
2020年の厚生労働省の調査によると、大卒者の初任給は、通勤手当込みで22万6000円だそうだ。
ちなみにJTは今回の値上げの影響を7月30日に発表した業績予想に含まれているとのこと。
「禁煙して子どもに服を買え」
筆者は一時、1日2箱を吸っていたが、ある日突然、ゼロにできた。
ホテル関係者に同行して東南アジアに出張した際、マレーシア・クアラルンプールの空港の喫煙室で、あるホテルの課長に対し、長男が生まれたので禁煙したいが踏ん切りがつかないと相談した。すると、その課長は言った。
「1日1箱なら400円(当時)でしょ?禁煙したら、男の子なら毎日おもちゃ屋でトミカ、女の子なら洋服を買ってあげられるよ」
タバコを吸うことにメリットが無いとは言わない。
しかし、この言葉にはタバコや金に関する価値観を揺さぶられた。「やめたい」と言う一方で言い訳を付けてダラダラ続ける習慣と、子どもの笑顔。天秤にかけるまでもなかった。
ただ、独りの決断では、また何かしら理由を付けて喫煙を再開してしまいそうである。
みんなで禁煙
ちょうど、その課長も「かく言う俺も禁煙したくてね…」と言っていた。それをまたとない好機と考え、クアラルンプールの空港で揃って最後の1本を吸った。
愛用していた純銀製ジッポーはオイルを吸えないように中の綿を捨て、100円ライターは同じ喫煙室にいた現地の愛煙家にプレゼントし、帰国の途に就いた。
その課長とは成田空港で別れ、数週間後、ある取材で再開した。すると、どこからか懐かしい香りがした。
「あれ?〇〇課長、まだスーツがヤニ臭いですね。禁煙したのに」
「ああ、あの後、成田ですぐに1箱買っちゃって喫煙者に戻ったよ」
「………」
課長は今、転勤で大阪のホテルに勤めている。きっと10月の値上げ以降も、習慣を崩さないだろう。