【独自、続報①】津田駒工業、希望退職の期限を延長して募集継続/応募が計画を大きく下回る

【独自、続報①】津田駒工業、希望退職の期限を延長して募集継続/応募が計画を大きく下回る

2022年6月3日

東証スタンダード上場の津田駒工業(金沢市)が2022年5月に踏み切った希望退職で、予定していた募集期限を過ぎてなお、追加で退職希望者を募っていることが分かった。当初は100人ほどを削減する計画だったが、関係者によると、募集期間中には40人程度しか集まらず、継続して声を掛けざるを得ない状況という。

当初の計画(2022年3月25日公表)では、50歳以上65歳未満の正社員と60歳以上の嘱託社員を対象として2022年5月9~20日に応募を呼び掛け、100人程度の削減になると見込んでいた。募集に応じた社員には所定の退職金とは別に特別加算金も支給するほか、再就職も支援するとしていた。

退職予定日は6月10日。ところが、筆者が関係者に取材して得た情報によると、期日中の応募者数は想定よりも大幅に少ない40人ほどにとどまり、退職予定日ギリギリまで対象年齢の社員に声を掛けることにしたようだ。

当初のプレスリリースは以下のリンクから。

https://www.tsudakoma.co.jp/uploads/download/Dh98RQVAA

総務部門は「外出」「直帰」ばかり

去る2021年、ある自動車部品メーカーが希望退職を実施した際、担当者は丁寧に取材に応じてくれた。業況悪化の現状、EV化で自社製品が用済みになる懸念、同僚に退職を勧める気苦労…。包み隠さず話してくれたため「先行き不安の中で会社を存続させるため、断腸の思いで希望退職」というニュアンスの記事を書けた。

一方、今回の希望退職に関する津田駒工業の対応は酷かった。

筆者は2022年5月28日金曜に初めて総務部門へ電話。筆者の本名と「ネットでニュース記事を書くために希望退職の進捗具合を取材したい」という趣旨を明確に伝えた。

ところが「担当者が会議中で、今日は戻らない」「(会議から戻らない??)ご担当は どなたですか?」「分かりません」「誰か知らないのに、この後の予定は分かるんですか?」と会話にならず。

その後のやりとりは次の通り。

月曜→「担当者が外出中で、今日は戻らない」

火曜→「会議中で、その後は外出して戻らない」

水曜→「席を外している」

どんな会社でも総務部門は基本的に内勤だと思っていたが、同社では外出・直帰がルーティンなのだろう。

さすがに業を煮やし、水曜に「近く記事を書くから、どなたでも結構なので、折り返し電話をいただけませんか?」と持ち掛けた。しかし、返答は「また この番号にお電話ください」

「あの、ご存知でしょうが、私は4営業日続けて この番号に電話してます。あなたが逆の立場なら『きっと明日は話を聞ける』と思います?」

最終的に「一応、電話番号を教えてほしい」と言われたので「一応」伝えたが、6月3日金曜の夜までリアクションがなかった。そのため、同社の見解や現状を聞けないまま記事化した。

いろいろと残念である。

応募者数の計画割れは「逆選択」?

ここから先はあくまで理屈の上での話で、言い方も悪くなります。ご了承ください。

さて、希望退職に応じたのが40人という状況を、どう捉えるべきだろうか。

参考にしたいのは経済学の「逆選択」という概念。例えば、保険業界では健康状態に不安がある人ほど情報を隠して保険に入りたがる。情報の非対称性により、本来は避けたい結果ほど、逆に手元に集まってしまう現象である。

誰しも多かれ少なかれ愛社精神がある。でも、社業が停滞する中で希望退職を実施すれば、腕に覚えがある有能な人材ほど「沈む船は早めに降り、いっそ独立か転職で力を試そう」と考える。

一方で「会社にしがみついていれば満額の退職金(あるいは毎月の給料)がもらえる」という消極的なモチベーションで働く人ほど、残留に魅力を感じることになる。

そもそも、会社(津田駒工業)側は希望退職で恒常的な人件費を下げて経営を立て直すために、年配社員100人の削減が必要と判断した。それで40人しか応募がなかったということは、数の上では「余計な人員が60人も居残ってしまう」ことを意味する。

しかも、前述のように、社内に留まる人材には「逆選択」が作用している可能性(全員がそうとは言わない。あくまでも理屈や傾向の話)がある。退職希望者が少なく残留希望者が多いという状況は、同社が直面する問題の根深さを暗示しているのかも知れない。

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まとめページは以下のリンクから

【まとめ】繊維機械の名門・津田駒工業、赤字続きで希望退職者を募るも応募少なく、瀬戸際が続く

繊維機械製造の名門、津田駒工業(金沢市)が窮地に立たされている。 2022年11…
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国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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