2021年9月1日の日本経済新聞電子版によると、クスリのアオキホールディングス(白山市)の青木宏憲社長は日経新聞のインタビューに対し、出店エリア拡大を軸に進めてきたような戦略を見直し、これからは既存エリアの深掘りに力を入れる考えを示した。
アオキは企業規模では全国のドラッグストア10傑に入っている。ここから全国トップ5入りを狙おうかというような時期の戦略見直しは、いろいろな意味で興味深い動きだ。
以下、引用。
「てこ」とは弱い力で通常なら不可能なことを実現する力を発揮する仕組みを指すはず。この「てこ」の意味は正しいだろうか??1カ所に集中的に出店(ドミナント出店)することでエリアでの認知度・シェアを上げてシナジーを生み、各店の売り上げを通常の予測より1割多くする、といった事例なら分かるが、エリアを拡大しても「てこ」は発揮されるのだろうか。疑問だ。
話が逸れた。
戦略の見直し必要性、当サイトも指摘
アオキが店舗数の増加による売り上げの増加、ひいては結果としての利益の増加を目指してきたとみられることは、このサイトでも紹介した。端的に言えば、企業規模を追求してきたのだ。
さらに、コロナ禍で消費者意識が変化し、より良いもの、より安いもの、より変わったものを求めるようになっていることも指摘してきた。
この点、北陸エリアに限って観察すると、アオキの勢いが鈍化しているのは鮮明だ。もちろん、エリア内でアオキは古参であり、客は目新しさからドラッグコスモスやスギ薬局に一時的に流れているとみることもできる。
しかし、最近のドラッグストアというのは店舗数がどんどん増え、自宅からの距離がコンビニよりも近い例も珍しくないほど、身近で、日常的に買い物する場所になっている。
買い物は「習慣」、規模拡大より足場固めを
普段の買い物というのは、ある意味「習慣」で、いったん自分がココと決めたら、よほど魅力的な商品が他になければ、基本的に同じ場所に通いつめる傾向がある。各社はポイントサービスやセミナーなどを通じて囲い込みを図っており「一時的に離れただけ」とみるのは危険である。
今回の青木社長の方針は、そうした事態を念頭に入れ、再び足元、足場を固める意味があるのではないか。もしかしたら、急に店舗数を増やしても、ドラッグ各社が同様に店舗数を増やす中、薬剤師や店長候補が確保しきれないということもあるかも知れない。
折しも、アオキはPB(プライベートブランド)の投入を発表したところで、この辺りに、戦略の変化が見てとれる。地元発の企業として、健闘を祈りたい。
最後に1つ。
従来のアオキは北國新聞ベッタリでヨイショ記事ばかりだった印象だったが、最近は北國新聞とスギ薬局がベッタリのようなので、両者が距離を置いているのだろうか。ともあれ、日経新聞がインタビューすると、こうした戦略の重要な転換を聞き出せるということ。地元住民としても、地元紙OBとしても、何だか残念な気持ちである。