七尾市和倉温泉を本拠地に旅館やレストランを展開する加賀屋(七尾市)の関係者によると、加賀屋の小田與之彦社長(5代目)が辞任し、與之彦氏の父で、3代目社長を務めた禎彦相談役が後任に就くことが分かった。
2014年以来の社長交代
背景や今後の流れは取材中。
與之彦氏は2014年に副社長から社長に昇格した。直近では、あわら温泉の旅館「つるや」を譲り受けるなど、2023年度末の北陸新幹線敦賀延伸を見据えた事業展開を具体化し始めていた(と筆者は認識していた)。
禎彦氏は1979年から2000年まで3代目社長を務めた後、会長を経て2014年から相談役に就いている。最近まで石川県観光連盟の理事長を務めていた。
4代目社長は禎彦氏の弟、孝信氏が務めた。
※10月3日追記:「社長」や「会長」は法律上の概念ではなく、単なる呼称です。禎彦氏が代表取締役に戻る過程で「社長」を名乗らない可能性、他人を社長に招いて自分は「会長」を名乗る可能性もあります。いずれにせよ、筆者は呼称ではなく、禎彦氏が実質的に唯一のトップになる状況に意味を見出しています。
どうなる、石川県の温泉旅館業界
2022年9月28日付の北國新聞によると、加賀市山代温泉で旅館「瑠璃光」「葉渡莉」を経営する「よろづや観光」では、コロナ禍で助成金を不正受給した責任をとって萬谷浩幸社長が取締役に退き、妻の真理氏が後任に就くことに決まった。
よろづや観光は不正に伴う引責辞任なので、おそらく加賀屋とは事情が異なるが、筆者は両社の立て続けの社長交代を共に残念な思いで聞いた。と言うのも、筆者には5年ほど前に小田與之彦、萬谷浩幸の両氏にインタビューし、いずれも好感を抱いた思い出があるからだ。
当時40代前半の萬谷氏、40代後半の小田氏は「旅館の親父」というより経営者然とした雰囲気で、伝統に新しい価値を乗せて会社(業界)を発展させる気概を共通して感じた。
北の和倉温泉に慶應義塾大学卒の小田氏、南の山代温泉に早稲田大学卒の萬谷氏がいるー。筆者は勝手に2人が石川県内の温泉旅館業界の両翼を担う存在だろうと位置付け、今後どんな展開を見せるか、密かに楽しみにしていた。
観光産業は今後、アフターコロナへ向けて復調する観光の地域間競争(国家間競争?)の真っ只中に入る。足元では、2022年10月11日にインバウンドの入国制限が撤廃されるという追い風もある。
本来なら、次世代の旅館経営者が斬新なアイデアで辣腕を振るう絶好の局面である。だが、県内を代表するような旅館で若社長の交代劇が続いた今、どことなく先行きが怪しいと感じてしまうのは筆者だけだろうか?
※以前に書いた加賀屋関連の連載は以下のリンクから
【10月1日の追記】與之彦氏は「つるや」に専念
2022年10月1日の北國新聞朝刊によると、交代は10月末で、與之彦氏は加賀屋の取締役を外れ、あわら温泉「つるや」に専念する方向らしい。
※まとめページは以下のリンクから
※宿泊施設に関して2022年春に書いた連載記事は以下のリンクから