今回は「ファンダメンタル投資の教科書」を基に「決算短信」の活用方法について、ポイントを絞って紹介する。
決算短信は原則として決算日から45日以内に公開される。通期決算のとき以外に、年に3回、四半期決算時に開示される「四半期決算短信」もある。
決算短信を使えば会社四季報より詳しい財務状況が把握できる。また、速報性にも優れる。各社のホームページに加え、上場企業が決算情報や営業速報、事業上の重要な決定などを開示するTD netで閲覧できる。
経営状況、事業環境を知る
まずは1ページ目のサマリー情報。対象期間の売上高や利益、配当、キャッシュフロー、自己資本比率などの情報が、前年同期と対比する形で掲載される。
ただ、2年分しか数字がない弊害がある。
コロナ禍の各社のように、大きく業績を落とした前年同期と比較すると、業績が急上昇したように見えることがある。でも「実は以前の水準からは、まだまだ回復途上」という場合も。あまりに前年同期との差が大きければ「株探」などのサイトを使って、2期以上前の実績と比べれば良い。
決算短信の4ページ目ぐらいから後には「経営成績等の概況」欄がある。事業を取り巻く外部環境、各部門の現状や課題、今後の見通しなどが文章で書かれている。これは何ら専門知識がなくとも読める。
財務3表を読む/リスク情報も知る
次に貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書がある。簡単に言えば、期末時点で会社にどんな資産や負債があるかをまとめた表、その期間の損益状況を示した表、期間中の現金などの増減と要因を記した表だ。ここでは、それぞれの表の詳しい見方は割愛する。
例えば、損益計算書を見ることで、どんな要因が利益を押し上げ、どんな要因が利益を押し下げたのかが分かる。これが理解できると、業績の回復が一時的な要因によるものだったのか、今後も恒常的にプラス寄与する要因によるものだったのか、といった分析ができる。
さらに、決算短信を活用すれば、このシリーズの過去の記事でも取り上げた企業のリスクも、ある程度は分かる。決算短信に「継続前提に重要事象」あるいは「継続前提に疑義注記」といった記述がある場合があるからだ。
特に後者は企業努力によっても状況を打破できない可能性があるとされ、注意が必要となる。言葉を選ばずに言えば、潰れるリスクがかなり高い状況であり、基本的には投資を控えるべきだ。
次回は今の株価が割高なのか割安なのかといった判断をする上で有用な株価指標を紹介する。