株価は小さな値動きを繰り返しながら一定のトレンドを形成して変動する。短期的な値段を見通すのは難しくても、中長期で株価が業績に収れんするのなら、業績予想から見て現在の株価が割高か割安かという判断はできるはずだ。
今回も「ファンダメンタル投資の教科書」を参照しながら、そうした判断に役立つ株価指標を紹介する。
PER=株価収益率
会社の利益水準と株価を比べるのがPER。
PER(倍)=株価/1株当たり予想当期純利益
当期純利益は各種の費用や税金を引いて最後に残った利益のこと。それが株価に対してどれぐらいの高さにあるかを示す。
ポイントは純利益は全て株主のものであるということで、PERは自分が投資した金額が何年分の利益により回収できるかを示す。だから、この倍率が低ければ低いほど、投資資金を短期間で回収できるということだから割安と言える。
急成長中の企業はPER40倍とか50倍といった場合もあるが、それは例外。通常の日本市場では15倍ぐらいが割高・割安の分かれ目と言われている。
PBR=株価純資産倍率
会社が持っている純資産に対して株価水準がどうかを見る指標がPBRだ。
PBR(倍)=株価/1株当たり純資産
株主が持つ権利の1つに「残余財産分配請求権」があり、企業が解散して債務を返済した後に株主は財産の分配を受けられる。PBRは株価が1株当たりの純資産(=残余財産)の何倍かを示している。
PBRは1倍を切ると割安と言われる。株価よりも1株当たりの純資産の方が多いことを示すからだ。
つまり「PER」は将来得る利益に比べて今の株価の水準を見る。一方で「PBR」は現在の企業価値と比べた株価水準を見る指標と言える。
ROE=自己資本利益率
経営指標として有名なのがROEだ。
POE(%)=当期純利益/自己資本×100
ROEは株主の所有分である自己資本を元手にして、どれだけの利益を確保できたか、という収益力を見られる。ROEが高ければ収益力のある優良な企業と言え、収益獲得能力に優れるため、将来の株価上昇余地も大きいと期待できる。
配当利回りとは
また、配当利回りとは年間に受け取る配当金が株価に対してどんな水準かを示す。
配当利回り(%)=1株当たり予想配当金/株価×100
例えば、配当利回りが5%ということは、現在の株価で購入すると、年間にその5%が配当として戻ってくることを示す。配当金額が変わらないと仮定すると、20年間、配当を受け取れば元が取れるということになる。
配当金を受け取ると、約20%の税金が引かれるので「それぐらいなら企業が自ら再投資に回して成長し、株価が上昇してくれた方が良い」と主張する人もいる。
しかし、配当にも大きな魅力がある。2022年前半のように相場が乱高下する局面では、企業が成長しても株価が素直に上昇するとは限らない。何かの弾みから下落し続けることもある。日々大きく動く株価と比べれば配当金は安定的。仮に株価が値下がりしても一定額の配当を定期的に受け取れれば、資産が目減りする局面で多少は気がまぎれる。
配当利回りは式から分かる通り、①配当を増やす②株価が下がる、のいずれかで上がる。業績や財務面に問題のない企業の配当利回りが上昇すると、配当金目当ての買い注文が増える傾向にあり、配当金は株価を下支えする効果もあると言える。
もっとも、今回紹介した株価指標・経営指標を参考にすれば、必ずしも株式市場で勝てるようになるわけではない。基本的に、株価というのは全ての情報を瞬時に織り込んで上下すると考えられるため、例えば株価指標が不思議なぐらいに割安なら、根深い悪材料がある可能性も視野に入れるべきだ。
指標はあくまで参考データとして活用するにとどめ、そこに定性的な情報(その会社への評判や店を訪れた際の雰囲気など)も加味し、自身で最終判断をしなければならない。