「ファンダメンタル投資の教科書(以下、本書という)」を参考に、今回は倒産危険度を見極めるため、財務面でチェックすべき5項目を紹介する。
以下の記述にある指標は、基本的に東洋経済新報社の会社四季報でチェックできる。
①自己資本比率は低くないか
「自己資本」というのは「株主資本」と「その他の包括利益累計額」の合計。その自己資本が総資産に占める比率が自己資本比率となる。
本書によると、80%以上あれば優良、50%超は合格点、20%以下は安全性の面からリスクが高いという。初心者は20%以下の銘柄を避けるべき。
②有利子負債は多くないか
有利子負債とは貸借対照表の負債項目のうち、借入金や社債など、利子を払わなければならないもの。
有利子負債が多ければ、当然、借金が返せなくなるリスクが高まる。ただ、借金が多くても同じぐらい多くの現金があれば、資金繰りの心配は薄れる。
本書では現金同等物(現預金や3カ月満期の定期預金など)と有利子負債の額を比べ、現金同等物の方が多ければ、とりあえず倒産リスクは低いと判断する。さらに、その差額が時間の経過とともに大きくなっているか、小さくなっているかもチェックが必要となる。
③営業キャッシュ・フローはマイナスになっていないか
営業キャッシュ・フローは本業を通じて企業が稼ぎ出したキャッシュのこと。これがマイナスということは損益計算書で言う営業赤字と同じで、本業によってキャッシュが減ってしまっている状態を指す。
本書では2期以上続けて営業キャッシュ・フローがマイナスなら、企業の収益力に関して根本的な問題がある可能性が高いと判断すべきだという。
④累積損失がないか
貸借対照表上の純資産欄にある「利益剰余金」が、総資産に対して30%以上あれば認定できる。
逆に利益剰余金が「▲」になっている(=マイナスになっている)企業は累積損失・欠損金があることを示す。その会社の過去のトータルの損益が赤字なので、将来の業績も怪しいと考えられる。
⑤債務超過になっていないか
自己資本が「▲」の状態を債務超過と言う。自己資本は①で見た通りで、債務超過とは資産よりも負債が多く、仮に手持ちの資産を全て売り払ってもなお債務が残ってしまう状態となる。
これは非常に倒産リスクの高いケースで、こうした企業は基本的に避けるべき。
⑥赤字続きではないか
3年以上の赤字は注意が必要。赤字が続けば純資産を食い潰してしまうからだ。
筆者の経験では、赤字が続いている会社は、よほど強力な時流の後押しでも受けない限り、株価の継続的な上昇は期待しにくい。株価的にはもともと低位にいるので、何かの材料が出れば瞬間風速的に数十%上昇することもあるが、すぐに失速するのがオチである。
⑦継続企業の前提に関する重要事象の記載がないか
四季報の会社概要欄に「継続企業の前提に重要事象」「継続企業の疑義注記」という記載がある場合は注意しなければならない。
前者は企業努力により経営破綻のリスクを解消することが十分に可能な場合に、決算短信や有価証券報告書に記される。一方、後者は企業努力によっても経営破綻のリスクを解消できない可能性がある場合に記される。つまり後者の方が深刻ということ。
筆者のこれまでの学びでは、株式投資においては「利益を出すこと」以上に「致命傷を負わないこと」が大切になる。競馬ならせいぜい1レースで数万円がなくなる程度だが、株式投資は下手をすると、1銘柄で数十万、数百万円の損失が生まれる。だからこそ、よほど資金に余裕のある人を除き、バクチ的な銘柄に近付くべきではない。
そういう意味で、上記の記載があるうちは投資を避ける方が無難と言える。
次回は上場企業が四半期ごと(3カ月おき)に公表する決算短信の活用法をまとめる。