田中化学研究所(福井市)は8月2日、2021年4~6月期(第1四半期)の連結決算を発表し、営業、経常、最終損益は黒字に転換した。同社は世界中で拡大する電気自動車(EV)関連銘柄。通期決算は赤字の予想だったが、今回の好決算により、継続的な成長が期待される。
4~6月期の売上高は97億円で、前年同期比2・3倍の高水準だった。前年同期は新型コロナウイルスの感染が急拡大した時期に当たるものの、前々年の51億円と比べても2倍近い数字だ。
決算短信によると、車載用途のリチウムイオン電池向け正極材料は、コロナ禍で販売が難航したものの、主要顧客による受注が増加基調で推移したそうで、売り上げは2・5倍に伸びたという。
損益面は設備投資に伴ってコストアップになってはいるものの、製品原料のニッケル、コバルトの価格が上昇し、黒字化に貢献した。
そもそも同社は5月に示した今期(2022年3月期)の業績予想で、売上高こそ45%増の330億円になると見込んだものの、営業、経常、最終赤字が続くという予想を公表していた。それゆえ、今回の4~6月期の黒字転換は、市場から「サプライズ」と捉えられている。
時間外取引はストップ高に
8月2日午後4時の決算発表を受け、同社の株価は時間外取引で2日終値から150円上昇してストップ高となった。
2日終値は894円で、時間外では午後4時39分には既に1044円となった。
そもそも同社の株価は米バイデン政権のEV後押しや欧州ノースボルト社への技術支援料の入金の思惑などから、2020年秋以降、大きく値を上げ、3月からはほぼ一本調子に上がり続け、コロナショック後に400円を割った株価は4倍超の1600円を超えた。
しかし、5月の2021年3月期決算は市場にとって失望以外の何物でもなく終わった期がいつも通りの赤字だっただけでなく、上記のように今期も赤字予想だった。そのため同社株式は徹底的に売られ、一時の高値から半値となる800円台で推移していた。
そこへ来てのサプライズ決算。同社は今回の決算短信で、しきりに今後の市場拡大を示唆した一方、通期予想は据え置いている。株価、業績とも、今後どのような展開を見せるか目が離せない。
田中化学のプレスリリース(https://www.tanaka-chem.co.jp/ir/pdf/R03_0802.pdf)