百貨店業の大和(金沢市)は2022年4月12日に開いた取締役会で、資本金の額を現在の34億6,270万円から1億円に減らす方針を決めた。累積赤字に伴う利益剰余金の欠損をとりあえず解消できるとともに、今後は「中小法人」となるため、税制上の優遇措置を受けられるようになる。
5月26日の株主総会に付議し、賛同が得られれば7月1日が効力発生日となる。
現在、大和の利益剰余金は29億1,924万円のマイナスとなっている。今回は減資対象の33億6,270万円からマイナス分を穴埋め(欠損を補填)し、利益剰余金をゼロに戻す。残る4億4,345万円は資本剰余金に繰り入れるので、資本剰余金は現状の11億円超から15億9,543万円に増加する。
税法上の中小法人になれば、欠損金の繰り戻し還付を受けられたり、繰り越し欠損金の金額の控除が受けられたりする。
でも「いや、いくら何でも大和が中小法人ってのはナシだろ」という声が聞こえてきそうだ。
確かに、中小企業基本法では、小売業なら「従業員50人以下」もしくは「資本金5,000万円以下」を中小企業の定義としている。大和は現状の資本金が34億円超、従業員数が643人(連結、2021年2月末時点、百貨店業だけだと430人)。規模だけで言えば、とてもじゃないが中小の部類に入らない。
何だかズルい気もするが、税法上は減資によって中小法人に数えられるようになる。ちなみに近年ではJTBやジャパンディスプレイ(JDI)が1億円への減資を実行している。
そんなにヤバいのか
JTBと言えば、コロナ禍で旅行需要がほとんどゼロになり、商売自体が成り立たなくなっている会社。一方、JDIは基本的に赤字の会社だ。百貨店は一時期を除いて営業を続けてきたわけで、それらの企業と同列には思えない。
大和が12日発表した2022年2月期の連結決算は、売上高がコロナ禍1年目の前期と比べて11.1%増の376億円だった。営業損益は4億円の赤字、純損益は3億円の赤字で、赤字額は縮小したものの2期連続で損失を計上することになった。
2期前は黒字だったが、3期前は高岡店閉店に絡んで多額の特別損失を計上し、47億円の最終赤字に。直近4年間の最終損益を足し合わせると、48億9,800万円のマイナスになる。
さすがに3期前のようなことは頻繁にないだろうし、今期(23年2月期)は黒字化を計画しているが、コロナの状況次第では下振れも考えられる。
上述の通り、今回の減資によって大和の利益剰余金は多額のマイナスが消えてゼロになった。ただ、商売の元手とも言える資本金と資本剰余金の合計は、これまでの46億1,468万円から16億9,543万円に減少する。赤字かギリギリの黒字という綱渡りの状況が続く中、余力はどんどん小さくなっている。