YKKグループのYKK不動産(東京)は2022年5月6日までに、黒部市吉田で複数の社有寮からなる街「I-TOWN」の開発に着手した。2024年までに計約270戸を整備する。
建設地はYKK黒部事業所から、あいの風とやま鉄道の線路を挟んだ向かい。
第1期街区では計画によると、敷地は8,505㎡で、ここに、周辺の低層住宅との調和を考えた木造2階建ての11棟、計94戸を建設する。延べ床面積は4,456㎡で、23年3月に開設する予定。投資額は16億円となる。
まちづくりの特徴は環境性能の高さで、太陽光発電、木質チップを活用したバイオマスボイラーに加え、南面からの採光や高断熱・高気密仕様にして冷暖房の負荷を抑制。ゼロエネルギーを実現する。このほか、食堂や温浴施設を共用とし、寮生同士の交流を促進する。
YKK不動産の発表資料によると、寮は事業所まで徒歩圏内で、地方都市にあってマイカーに頼らない生活、将来的に夜間操業を支える基盤にする狙いがある。
隣接地では第2期の計画もある。
YKKはファスナーも、住宅も、生産用機械も作る
さて、YKKは言わずと知れた世界的なファスナーのメーカー。
ただ、今回の寮を見て思い出したのが「YKKは機械メーカーでもある」という事実だ。ご存じでない方もいるかも知れないが、YKKがファスナーを作る際に使用している機械は彼らが自前で製造している。
以前は「工機技術本部」という生産用機械を作る独立の部署があり、21年度にはファスニング事業、AP事業(建材)にそれぞれ統合された。この一貫生産体制はYKK独自の競争力の源泉の1つとなっている。
YKKグループは数年前から、黒部市内で、自然エネルギーを最大限に活用する街「パッシブタウン」、社員寮などの開発を進めている。
想像を交えて背景を書くと、黒部に新しくてハイグレードな賃貸物件が少ない中、本業のファスナー作りや建材作り同様、不動産開発においても「ないなら、新しいものを自前で作ろう」「それを通じて社会課題を解決して発信しよう」という姿勢が当たり前のDNAとして存在することが、こうした特色ある寮の整備につながっているのだと、筆者には映る。