適正株価なんて、ない /「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」cis

適正株価なんて、ない /「一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学」cis

極端だけど、でも、よく考えると、極めて普通のことを言っていると再認識する。そんな本。ぜひ、おすすめしたい。

著者は300万円から投資を始め、一時は104万円まで減らしたが、その後、自らの投資手法を見直して230億円を稼ぐに至った。その投資に関する哲学を紹介した本であり、ここに印象的だった部分をかいつまんで紹介する。


大原則は順張り

投資には「順張り」と「逆張り」がある。逆張りは株価が下がった時に反転を期待して買い、順張りは株価が上昇基調の局面でさらなる上昇を見越して買う。

ここで筆者が「大原則」として勧めるのは順張り。不確定要素が多い株式市場にあって、株価が上昇しているのは、いま買われているから。値下がりしているのは、いま売られているから、というのは紛れもない事実だからだ。

筆者の考え方に一貫するのは「分からないことが多いなら勝手な予想はせず、市場の『潮目』に合わせて行動するのが合理的」という哲学。相場のことは相場に聞き、だから株価が上昇している間は売らないし、下がっている銘柄は買わない。

トータルで勝てれば良い

上述のように、目先の利益にはこだわらない。だから、上昇局面で利益確定はしない。

利益をなるべく伸ばす一方、迅速に「損切り」を行う。小さな損は幾つ重ねても良い。重要なのは勝率ではなく、トータルの損益がプラスであれば良いと考えるべきだという。

株価

世の中にはたくさんの株価指標があり、投資家は現在の株価水準が割高か割安かを判定する。

ところが、筆者は株価に「適正価格」なんてないという。「現在の株価が本来の価値を織り込んでいない」などと考えるのではなく、目の前の株価こそが適正な答えだと考える。買い値より高く売れれば勝ちであり、指標や運、バランスは考慮しない。

それを筆者は「今ある優位性に張る」と表現している。


株取引をやっていると、値下がりしても「もう少し経てば反転するはず」と根拠なき楽観論を展開し、逆に値上がりすると「もうじき下がるかもしれない」とビクビクして微益で利益確定しがちだ。

本書では、そうした人間の「甘え」のようなものを排除し、株取引の勝負に徹するために必要な「当たり前のこと」を、いま一度、私たちに示してくれる。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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