「副業」や「複業」を強くお勧めしたい。
理由は「〇〇株式会社の△△」のうち「〇〇株式会社」を外すことで、個々人の実力が丸裸になり、自身を見つめ直すきっかけになるからだ。
問われるのは肩書きより具体的なスキル
筆者は最近、本業で一流企業に勤める傍ら副業として別の仕事に携わる人たちと働く機会に恵まれている。そこから、多くの驚きや学びを得た。
たとえ「大企業の管理職」であっても、副業の場では本業の肩書きは通用しない。問われるのは「で、あなたは何ができるの?」という、具体的な手持ちのノウハウやスキルである。
1つの組織に長く在籍すると、そこでしか通用しない考え方に染まりがち。当然と言えば当然で、社外の人と関わることがあっても、最終的に自身を評価するのは社内の人間だから、出世のためには「社内政治」みたいなものにかまけることになる。
それは「社会人」じゃない
社内政治みたいな大げさな話ではないが、会社員時代の筆者には「薬にも毒にもならない」ことを勧める上司がいた。ワンマンの会社では従順なだけが取り柄の下らない人間が評価されやすいが、それが長い目で見た組織づくりや人材育成の面で正しいはずがない。
そんな組織固有のノウハウや心得は、社外の人にとっては何の意味もなさない。自身は大きく成長したつもりでも、世の中の人からは「肩書きは立派だが、会ってみたら大した人物じゃないな」と落胆されることもある。
つまり、社会人として成長したのではなく、いわば「社内人」として余計な鎧で着膨れし、ふんぞり返っているような状態だ。
企業が導入すべき理由
この点、副業の現場に出れば、裸一貫で社外の人と正面からぶつかるしかない。
それぞれが得意なことを持ち寄り、チームを組んでゴールに向かう。重たい鎧なんか着ていたら、一瞬で置いていかれる。
バックグラウンドが異なる人とチームを組んで仕事をすると、自身にとっては当たり前のスキルを相手が重宝がってくれたり、逆に自分が別世界と感じていた技術を目の前の人が簡単に提供してくれたりする。
実際、そんな「副業人材」の方々との会話は「そんな考え方があったのか」という発見の連続だ。スキルとスキルが掛け算になり、新たなアイデアが生まれる。その繰り返し。
ここに、企業側が副業を奨励すべき理由がある。社員は自分の能力や技術のレベルや重要度を認識する機会になるし、企業は従来にない発想を取り込む機会になる。
「ノウハウが流出したらどうする」と薄暗い洞窟に籠もっていて、どうなる?ノウハウどころか人材の流動性が高まり、働き方が多様化する中、前時代的な価値観は優秀な人材の自社への流入を阻害するだけだ。
個々人の成長、企業の発展的な成長を見据え、ぜひ副業・複業をお勧めしたいと思う。