人材の流動性が高まると、絶えず、より良い環境に人が流れる。そんな時代に驚きの社説を見つけて呆れてしまった。
2023年6月1日、石川県内の地方紙に、採用活動の解禁を受けて「企業は学生の県外流出を食い止めよ」「学生の定住化につながる役回りを」という趣旨の社説が載った。
なぜか、県内就職を後押しする県の制度と連携し、地元での就職率を上げてほしいらしい。ただ、主張はそれだけ。大部分は一般論に終始する内容だった。
各企業が採用活動を始めるに当たり、掛ける言葉は「学生を石川県から逃がすな」しかないのか。内向きで後ろ向きな思考に驚く。
「人材確保≠新卒採用≠定住」の時代
企業は、より優秀な学生がほしい。
石川県には多くの高等教育機関があるれど、一般的な感覚で言えば、もっと優秀な学校は県外にたくさんある。であれば、優秀な学生は県外にたくさんいるはず。終始「人材を奪われる」と心配する一方、よそから連れてくることを考えないのは、何故だろう。
もちろん、地元の学生をテキトーにあしらえ、と言いたいわけではない。採用に当たって掲げる大目標は「県内や県外に関係なく、より良い人材を、各社の力で引っ張ろう」とオープンで前向きなものであるべきだということだ。
そして、人口減少と人材の流動化を前提とし、リモート勤務や副業が進む現状を鑑みるに「人材確保=新卒採用=定住」というステレオタイプな考えは、もはや成り立たない。
すると、社説で唱えるべきは「企業は働き方や雇用への考え方を柔軟にして総合力を維持・アップさせる時代。その中核機能を内部で担う人材として、より良い新卒学生をオープンに集めるべく、自社の魅力を見つめ直してアプローチしよう」だと思うが、どうだろうか。