北陸電力は2024年度の新卒採用(大卒)から、社員本人の希望に基づく勤務エリアを中心に働く「プロフェッショナル職」を導入する。
発表文によると、プロフェッショナル職は特定のエリアで専門的な技能を高めながらキャリア形成を行う。
導入の背景には働き方に関する価値観の多様化に対応する狙いがあるという。
充実させるべきは「動機付け要因」/ハーズバーグの理論から
筆者のこれまでの取材によると、特に若年の社会人で「働き方は自分で決める」という意識が高まっている。
自分のキャリアパスを自分で決めたい層にとって、唐突に「来週から〇〇支店へ行け」「来月から××担当だ」と言われても、素直には従いにくい。筆者も、転勤・異動を理由に退職を告げる例を間近で見たことがある。
これを「最近の若者は堪え性がない」と言ってしまうと、何も解決しない。「仕事」や「キャリア」、「働き方」への見方が長い時間をかけ、より柔軟に変わっているわけで、関係者みんながその変化を認め、年配社員と若手社員、使用者と労働者が折り合えるポイントを探るのが大切だ。
長く労働力を確保するには、単に福利厚生や待遇を厚くするだけでは足りない。それはアメリカの臨床心理学者ハーズバーグが言うところの「衛星要因」に該当する。「不満足」の抑制効果はあっても「満足」を得る効果までは見込めない要因のことだ。
本来、長期的に人材を獲得して活躍してもらうには「動機付け要因」が重要になる。自己実現欲求や自尊欲求に関するもので、これが満たされると、人は仕事を肯定的に捉え、積極的になる。筆者の理解では「自分が求める働き方の実現」は、こちらに分類される。
北電が導入するプロフェッショナル職は、多様な働き方を認めることにより、これまで転勤をネックに感じて北電の門をたたかなかった優秀な人材を獲得し、職務満足を高めるための取り組みとして評価できると考える。