愛人への手当を経費にするには/「節税」の超・裏ワザ(根本和彦)㊦

愛人への手当を経費にするには/「節税」の超・裏ワザ(根本和彦)㊦

2021年12月28日

さて、経費の計上にはストーリー作りが大切だということが分かったところで、本書はそれぞれの項目ごとの紹介に入る。

その過程で、愛人への手当を経費として落とす方法を紹介する(本書は「愛人」を推奨しているわけではない。「こんなものまで経費で落とせる」というのを示す極端な例として紹介しているのだ)。

 

地代家賃

事業用に借りている物件のこと。

例えば住居用に借りている賃貸アパートの一部を事業用に使う場合、家賃の約6割なら経費として許容範囲となる。もちろん、事業用に借りているマンションなどは100%経費となる。

消耗品費

仕事上、繰り返し使う少額の物品のこと。

例えば文具や用紙、ガソリン代、名刺代、プリンターなどで、コーヒーなどの飲食物は直接的に業務に関係ないため処理できないらしい

使用が1年未満か10万円未満の什器備品の購入費も含む。この点、10万円以上のものは消耗品費ではなくなり、減価償却費として処理する。

もっとも、10万円以上20万円未満なら「一括償却資産」でき、3年間で均等に計上できる。15万円のパソコンを買った場合、5万円ずつ3年に分けて計上するということだ。

20万円以上だと原則として減価償却費として処理することになる。「原則として」というのは、青色申告の事業者は例外があるからだ。

ここで裏技を紹介。計10万円以上のパソコンも、本体やモニター、キーボードなどをバラバラに購入すると、消耗品費として計上できるという。

友人との食事は接待交際費

接待交際費

食事代や飲食代など「仕事に関係のある人」に対する接待や贈り物にかかる費用。

これも、法人の場合は基準が緩い。相手は友人でも知人でもいい。会ったら仕事の話ぐらいするし、そこからインスピレーションを受けて仕事につながることもあるから。これこそ「ストーリー」である。資本金1億円以下の企業なら年間800万円まで認められる余地があるという。その金額の大きさが魅力だ。

これも個人事業主は否認されやすい。

旅費交通費

仕事上の出張だというストーリーを描けるかどうかがポイント。オンラインショップに出品する商品の仕入れ、不動産投資のための市場調査、といった具合だ。

さて本題(?)の愛人手当だが、ここまで見てきた通り「事業に必要」であることを立証できればいい。そこで最も安全な方法がこれ。

愛人を非常勤役員にしてしまう

役員というのは従業員のように8時半に出社して17時半に帰る、といった勤務体系ではない。

年に数回、出社して経営者にアドバイスするだけでもいい(実際、株式会社の社外取締役なんて、そんなもんだろう)。

これは家族でも同じこと。家族を役員にして報酬を渡し、経費として処理する方法は昔から当たり前に使われていた。

ここで大事なのは、非常勤役員も経営に参加している事実を議事録や報告書などの形で記録しておくこと。そして金額があまりに大きくならないこと。

雑費

クリーニング代、ゴミ処理代、振込手数料など、分類しにくいものが含まれる。これがあんまり多いと、きちんと仕訳できていない印象を与えてしまうらしい。

税務署は「経費の項目間のバランスを見ている」と言われることがあるが、実際は過去の数字との比較を見ている。ただ、雑費は多すぎると疑問を持たれる。経費全体の1割程度に抑えておくのが妥当らしい。

「社会保険料は労使折半」はウソ

節税以上に現金を残す効果を持つ可能性があるのが、社会保険料の負担の軽減だ。

よく、給与所得者の社会保険料は、「労使折半」ということで、従業員と会社が半分ずつを負担しているといわれています。しかし、それは明らかなウソです。

第6章 税務は激変の時代に突入する

会社側は従業員分の社会保険料を人件費として考えている。例えば10万円の社会保険料を払う人がいれば、5万円を会社側が払う。でも、それは会社が懐を痛めて払ったのではなく、給与を5万円減らす代わりに社会保険料を払ったということ。会社として社員に払う金額は変わらない。

さて、役員としては役員報酬を減らして社会保険料を減らせる。本書では役員報酬が毎月50万円の場合と25万円の場合では、社会保険料が年間86万円も違うという試算を示している。

ここで月額役員報酬を社会保険料の最低標準報酬6万3000円未満にすると、社会保険料は月1万1427円で、報酬が月50万円の場合と比べ、152万円安くなる。

ただし、役員報酬を減らすと人件費が減るので、法人税が増えるのを防ぐには、別の経費として吸収しないといけない。

給与から賞与に変更する方法もある。給与と賞与では計算方法が違う。仮に①毎月60万円を受け取る経営者②月5万円と賞与を年660万円受け取る経営者ーはいずれも年間720万円の報酬を受け取っているが、②は社会保険料が①より90万円安くなるという。

マイクロ法人の設立で節約

最近よく聞かれるのが「マイクロ法人」。

年間100万、200万円という売り上げがある法人を設立し、毎月の役員給与を6万円だけ受け取る場合、健康保険料、厚生年金保険料は最低ラインなので、年間の社会保険料は27万円。

厚生年金保険に入ると、個人事業主の国民年金と違い、妻も被保険者となる。個人事業主の場合は妻も自分で国民年金保険料を支払うので、この時点で節約になっている。その上、厚生年金は支給される年金が国民年金よりも高い。

マイクロ法人の健康保険料は年8万円強で、個人事業主の国民年金保険料の年68万円と比べると、雲泥の差がある。

社会保険はどれかに加入していればいい。マイクロ法人を設立すれば、厚生年金保険と健康保険に加入でき、国民年金と国民健康保険から外れ、妻も健康保険に入れるのだ。

【感想】収入増に「+α」

本書は特に後半から得るところが多い。

マイクロ法人に関しては作家の橘玲さんの著書でも多く触れられている(後日、紹介するつもり)。それらの書籍に本書を併せて読む限り、内容さえ理解すれば、がむしゃらに収入を増やすこと以外にも、手元に金を残す方法がありそうである。

近年は法人に対する税金を減らす一方、個人に対する税金を増やす方向となっている。そして、足元ではフリーランス、個人事業主の数が増えている。本書が指南する各種の手法は、これからの時代に広く求められるスキームになるかもしれない。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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