節税とはグレーゾーンを賢く活用すること/「節税」の超・裏ワザ(根本和彦)㊤

節税とはグレーゾーンを賢く活用すること/「節税」の超・裏ワザ(根本和彦)㊤

2021年12月27日

税金って、とにかく難しい。そもそも種類が多すぎるし、毎年毎年、制度が変更になるし。会社員をやっていれば、良くも悪くも経理部が勝手に源泉徴収するので、そもそもの仕組みが分からない。

でも、何か損している気がする。

そこで紹介するのが本書。タイトルには「元国税調査官が捨て身の覚悟で教える」と付く。まさか節税方法を本にしただけで「国家から消される」わけでもあるまいし「捨て身」の意味は分からないが、本書は特に個人事業主、小さな法人の経営者にとって有益な内容となっている。

【要約】そもそも「節税」とは?

筆者によると、税金には意外と「グレーソーン」が多いのだという。例えば知人との会食であっても、自分の仕事に関する話をするなら、それは交際費として認められる可能性がある。極論すれば、あまりに多額でなければ、キャバクラ代さえ経費で落とせる。

そこには基準があるようで、実はなく「税務調査の9割はグレーゾーンんに属する」としている。

ここで節税の定義をしよう。本書では

節税 = グレーゾーンの経費をできるだけ落とすための努力

としている。つまり、可能な限り経費を計上し、課税所得を減らすことで節税につなげるという意味だ。

元国税調査官の筆者は税務署員の仕事について、いくつかの特徴を挙げている。

まず、税務署員も「雇われ」の身であり、そうであればこそノルマのようなものがあるという。限られた時間で多くの件数をこなし、修正申告させて納税額を上積みするのだ。

本書によると、調査に入った税務署員は手ぶらでは帰れないので、時にウソや脅しを使うこともあるが、仮にそうされても調査時に作る「質問応答記録書」(警察の供述調書のようなもの)にサインしてはならないという。

いったん重加算税を課されると、その年以降、税務調査に入られやすくなります。いわゆる税務署の「ブラックリスト」に載った格好です。

調査の標的にされやすいのは次の特徴を備える企業。

① 毎年黒字で、売り上げが増えている

② 例年と比べて極端に増収

③ 過去に例のない経費の計上

④ 期末近辺で一気に経費が増加

⑤ 脱税を助ける業者と取引

こうした会社が調査にターゲットになるのにはワケがある。それは、上記のように効率的に案件をさばく以上、なるべく簡単、迅速に課税できそうな会社を探すからだ。本書ではこのことを「コスパが良い」と呼ぶ。

だから売り上げが1000万円以下の消費税免税事業者は消費税を追徴できないため「コスパが悪い」として、それほど標的にならないらしい。

法人の方が経費を落としやすい

節税には2種類ある。帳簿上の操作により、経費を前倒しで計上し、事業所得を減らすような「出費しない節税」と、実際に金が出ていく「出費する節税」だ。

このうち、後者は小規模企業共済の積み立てなど、法的に認められた「シロの経費」があり、一方で冒頭にあるように税務署員の最良で決まる「グレーゾーンの経費」がある。

そもそも経費というのは「事業のために必要な支出」のこと。

上記のグレーゾーンの経費を多く勝ち取るためには、事業を営む上で欠かせない支出であるということを、きちんと説明できるか、にある。そういう意味で、大事なのは「ストーリー」と「事実」、「証拠」だという。

実は一口に経費と言っても、法人と個人事業主ではハードルの高さが違う。法人は組織上、経営者個人と会社が別人格とみなされる一方、個人事業主は事業と個人の生活が密接につながっている。

つまり、法人は会社の事業と何らかの関係があれば認められやすい。それに対し、個人事業主が経費を計上する場合は「あくまで個人の生活ではなく、事業に“直接的に”必要な支出である」と示さなければならない

領収書は整理するな

領収書は法人と個人の青色申告事業者は7年、個人の白色申告事業者は5年の保存義務がある。

そう聞くと「ちゃんと整理しておかないと」と思ってしまうものだが、本書では「整理するな!」と指南する。

キレイに並んでいると、税務署員も探しやすい。引っ掛かりを見つける手助けをしているようなものなので、保存はしても、整理はしてはいけないという。例えば年度ごとにダンボールや封筒に放り込んでおく程度でよいらしい。

 

㊦に続く

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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