アイデアは意識外で生まれる「アイデアのつくり方」/ジェームズ・W・ヤング(CCCメディアハウス)㊦

2021年7月27日

要約③「発想の5段階」(続き)

(㊤の振り返り)ヤングの「発想の5段階」は次の通り。

  1. 資料集め
  2. 資料を咀嚼する(嚙み砕く)
  3. 「孵化」の段階(意識の外に置く)
  4. アイデアの誕生
  5. 具体化させる

㊤で紹介した通り、発想の5段階のうち1、2では多様な情報を集め、解釈することで、アイデアを出すための「良い土」を作り、種を埋めた。ここからは実際にアイデアを生むための過程に進む。

3では「孵化」に向け、いったん問題から離れ、リラックスして他の事をする。意識の外に置くということだ。

「他の事」と言っても、できるなら何か想像力や感情を刺激するものをやってみるのが望ましい。その間に頭の中では1、2で集めた情報がさまざまに組み合わされる工程が進んでいるという。

芽が出る前に、地中で根が伸びているような状態を指すのだろう。

4は突如としてやってくる。本書では「アイデアを探し求める心の緊張を解き、くつろぎのひとときを過ごしている時」にアイデアが急に訪れるという。

5は現実の条件と突き合わせ、理解ある人の批判を浴びることでアイデアを発展させること。

まとめ アイデアは「段取り八分」?

本書は非常に薄手だが、全てのビジネスパーソンの役に立つはず。

アイデアを思いつく、というのは一握りの天才だけに許されたことではない。本書によれば、むしろ周到に準備し、手順を踏めば誰でもある程度は可能だと示唆している。

最も大事な手順が1、2であることに疑問の余地はないが、肝となるのは3だろう。真偽のほどは分からないが、古来の哲学者が入浴中に大きなひらめきがあった、などという話は枚挙に暇がない。

私たち凡人レベルで考えてみても、机に向かってウンウンうなっている時より、気晴らしに買い物をして流行の物を見たり、美術館や公園を歩いてみたり、喫煙したりしている時に、ふとひらめくことがある。

机に長く座っていることが偉いという時代は、もう終わった。そういう意味でも、適度な「息抜き」が頭の中に蓄積された情報を組み合わせ、新たな発想を得るキーになるのは確かなようだ。

まさに本書の言わんとしていることは事前準備で勝負が決まる「段取り八分」という当たり前のことである一方で「いったん問題を忘れて離れてみよう」という、少し勇気の必要な提案だ。ぜひ、ご一読を。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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