ドラッグストア「ゲンキー」が強い理由㊦ とにかく低価格に魅力、食品も取り扱い多く

2021年8月6日

㊤では①低価格戦略で②内製化を進めて③出店エリアをむやみに広げずに絞ったドミナント(集中)出店を進めた結果、コロナ禍2年目も、既存店売上高が前年並みを維持し、2022年6月期は過去最高の業績を更新する見込みと紹介した。

(出典・Genky DrugStoresホームページ)

㊦では消費者として強みと弱みをどこに感じるかを、2015年ごろにできた金沢市南西部にある自宅から徒歩圏内の店舗の状況を基に紹介する。

※中には、その店特有の事情があり、他の店に当てはまらないかもしれない。その点はご容赦を。

何を置いても、まず低価格

店内のBGMで「近所で節約できる店♪ゲンキー♪」と流すだけあって、最大の特長は低価格だろう。これだけコンビニが増えると、消費者は「定価」に慣れ、どのドラッグストアに入っても、大抵は価格を安く感じるもの。

だが、実はドラッグストアごとに値段は結構違うが、各社とも特価商品を目立つように陳列するので、パッと見は分かりにくい。筆者の見たところ、ゲンキーは特に食品(特に納豆、もやし、卵など使用頻度が高いもの)で安値が目立つ。

しかも、食品の棚は店舗奥にある。来店客を店舗奥に誘導し、途中の棚で「ついで買い」を誘発したいのだろう。ドラッグストアにとって、食品というものの占める重要性が、それほど高まっているということだと思う。

通路はやや狭いが、だからこそ

店内の通路幅は同業者と比べて狭い。棚の高さは同程度か。通路を狭くすれば、小さめの店でも、より広い店と同じアイテム数を置ける。

ドラッグストアの出店競争が続く今、店舗が小さければ出店場所の候補は増えるだろう。さらに建物を造る金額も小さくなるし、それらが低価格につながりそうだ。

もっとも、我が妻は子どもがベビーカーに乗っていた頃、ゲンキーを敬遠し、同じく徒歩圏内にあって通路が広々としたVドラッグを利用していた。ベビーカーを押すと、通路は広い方が買い回りしやすいからだ。もしかしたら、乳母車を押す高齢者も同じか。

どんなスタンスをとってもメリット、デメリットがある。そんな中、決算説明資料に「坪当たり〇〇」という指標を連発するゲンキーは、おそらく低コストにつながるよう通路幅をやや狭く設定する選択をしたのではないか。

長い行列、レジは遥か彼方

ただ、筆者が気になるのはスタッフの質である。自宅近くの店はレジが3つあるものの、土日はレジ待ちの長い列ができる。ゲンキーはアルコールにもポイントがつくので、筆者はたまにワインやビールを持って列に並ぶ。そこで思う。

重いカゴを持って数分間、何もせず行列に並ぶのは、苦行である

その苦行を越えてレジに到達してみると、スタッフに覇気がない。行列ができていることを知らないはずはないが、急いで作業する素振りもない。

ただ、これでも昔よりはマシ。以前は3つのレジのうち、クレジットカード対応しているレジが1つだけだった。筆者がクレジット未対応のレジに通されると、スタッフはクレジットに対応した1つのレジまで行き、最終的な会計処理をする必要があった。異常に非効率である。

数年前、ある食品スーパーの社長にインタビューした際、レジ待ちに関して良いことを言っていた。

「私はあまり従業員に怒らないが、レジ待ちは力いっぱい怒る。楽しく商品を選んでもらっても、最後にイライラさせたら後味は悪いからだ」

最近、ようやく3つのレジ全てがカードに対応したが、それでも時間帯によっては長い行列になる。他の店も同じなのだろうか。

セミセルフ化も一案??

もしかしたら、レジの台数を絞るのも、ゲンキーの低価格の理由かも知れない。レジが多ければ、繁忙時に稼働台数を増やさないといけない。「おいおい、レジ5つあるのに3つしか稼働してないぞ」と不平不満がたまるからだ。

1つの解決策はセミセルフやセルフレジか。最近、食品スーパーでは導入が進んでいる。その方が数十%レベルで回転が速くなり、人件費も安く済む。ゲンキーの哲学にも合致している気がするので、ぜひオススメしたい。

今後、どのような店づくりをしていくのか、楽しみである。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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