仕事で資料を作成する上で関連するデータを比較する際、ビジュアル的にどう表現すべきか迷う方も少なくないはず。
一口に「グラフ」と言っても、棒グラフや折れ線グラフ、円グラフなど種類が多い。30代の筆者の記憶では、学校で使い分けを教わる機会はなく、多くの国民は社会人になって見よう見まねで会得するのではないか。
この点、皮肉的に言うと「見よう見まね」が最も上手なのは公務員だ。「〇〇調査」「××統計」のデータは見事に前年と同じビジュアルでまとめられる。
その姿勢は柔軟性に欠け、クローズアップすべき変数が見過ごされる恐れもあるが、踏襲しているフォーマットは先達たちが見つけた最適解。見やすく、理解しやすいのは確かだ。
対極にあるのは「柔軟性」「瞬発力」の高さを自称するマスコミ。本来なら棒グラフで示すべきデータが「柔軟に」その日の気分で折れ線グラフや一覧表に加工され、見た目の違和感が大きいケースが散見される。
今回はグラフの使い分け方をまとめてみる。
「積み上げるタイプの数字」は棒グラフ向き
まず、棒グラフは「ゼロから積み上げるタイプの数字」に向いている。
例えば、売り上げや利用者数、来館者数などだ。一定期間の売り上げはゼロ円からスタートし、100円、200円…と積み上げていく。棒グラフはビジュアル的に下から上に伸びた形状であるため、こうした数字と親和性が高い。
当サイトで最近取り上げた北陸新幹線の過去7年間の利用者数をまとめたグラフを例にとってみよう。
同じ色合い、同じ軸でグラフを作成した。これを見て下のグラフが分かりやすいと言う方は少数派だろう。
後述するが、折れ線が結ぶ「点」は単に一つの数値を示す。年間利用者数は、ある日突然、その数値となって現れるわけではなく、日々の積み重ねの結果だから、棒グラフに向く。同様に、上場企業が決算説明資料で売上高の推移を示す際も、基本的には棒グラフで示される。
「一時点の状態」の推移を示すには折れ線グラフに
次に折れ線グラフ。
こちらは前述の通り、一時点の状態を示すため、単なる数値の推移を示すのに適している。例えば、何かの変化率や気温などだ。
オフィスの空室状況は1室1室の契約・退去の積み重ねで成り立つが、こと「空室率」は、ある時点での状態を示す数値となる。これはゼロが基点となっているわけではないので、棒グラフで示すと、ゼロから伸びる棒に違和感がある。
構成比は単年分なら円グラフに
構成比を示す場合は数字が単年分なら円グラフが適している。例えば、ある都市を2020年に訪れた外国人観光客の国別の比率を示す場合などだ。
これが複数年の比較になると、複数の円グラフを並べてもよいが、そうすると比べにくい点は否めない。その場合、以下のようなグラフにすると比較しやすい。
上場企業の決算説明資料でも、セグメントごとの売り上げ構成比を示す場合などに用いられる。
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グラフは「とりあえず作って添えておく」ものではない。ある意味「百聞は一見に如かず」を実現する協力な武器で、文章を補うばかりか、場合によっては文章をスルーされても言いたいことが伝わる作りにしなければならない。
作成に当たっては手元の数字がどういう成り立ちでできており、それをグラフ化して何を示したいかを考えることが大切だ。つまり、グラフを作る作業によって自分の主張を整理する。逆に言えば、何だか違和感のある、何が言いたいのか分からないグラフしかできないのなら、まだ頭の中が整理できていないという証拠だ。グラフには、そうした価値がある。