「頭脳パン」の登録商標を持つ金沢製粉(金沢市)は、ベーカリー事業に進出する。野々市市新庄5丁目にあったパン店の運営を承継し、2022年7月中旬に小売り直営店をオープンさせる。
出店場所は県道179号(野々市鶴来線)沿いに位置する。
新店はもともとパン店「エッセン」があり、その後2022年4月までパン店「ベーカリー ハニーポット」があった建物に居抜きで入る。
金沢製粉によると、ハニーポットの従業員に店に残ってもらってパンを作り続けるほか、ハニーポット時代にはなかった品ぞろえとして「頭脳パン」を提供する
新店の店名は、ハニーポットが再び動き出すという意味を込めて「ハニーポット リブート(=reboot、再起動という意味)」とする予定だ。店内には30種類以上のパンをそろえるという。
小売店で消費者と接点
金沢製粉は1932(昭和7)年創業で、パンや麺類の原料となる小麦粉などを業者向けに販売している。これまでは主にBtoBのビジネスを手掛けてきたわけだが、今回は初めての小売店で消費者向けのBtoCビジネスに乗り出す。
この狙いについて、寺田将紘専務は「消費者と接点を持ち、ダイレクトに反応を見ることができる。アンテナショップ的に活用し、今後の商品開発に生かしたい」と意気込みを語る。
ハニーポットは金沢市田上地区で親しまれた後、2020年1月に野々市市新庄5丁目に移転したらしい。そして、2022年4月に閉店する際は「惜しむ声が多く聞こえてきた」(寺田専務)そうだ。
寺田専務によると、金沢製粉は長くパン店を経営したいと考えていたが、人員確保や設備投資などのイニシャルコストを勘案して具体的な計画に至らなかった。そこへ取引先だったハニーポットが閉店するという話が入ってきたため、運営を引き継ぐ形でベーカリー事業を始めることにした。
【豆知識】実はレーズンだけじゃない「頭脳パン」
ところで、今回の取材を通じて新たに知った事実がある。
それは「頭脳パン」というのは原材料・具材が統一されているわけではない、ということだ。大雑把に言えば「頭脳粉」を使ったパンの総称が「頭脳パン」であり、だから味付けには工夫の余地があるのだという。
寺田専務によると、頭脳パンは現在、石川県内をメインに富山県や関東地方でも製造されている。石川県内では基本的にレーズンを使うが、県外ではクリームやチョコを具に用いる商品もあるらしい。
今回取材した金沢製粉は全国で唯一、頭脳粉を製造している(この辺りは下記リンクの過去記事を参照)。そして同社は頭脳粉を作っているが、頭脳パン自体は別の会社が製造している。確かに、先日、食品スーパー「どんたく西南部店」(金沢市新保本3丁目)で購入した頭脳パンは佐野屋製パン(七尾市)が作っていた。
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さて「難関校に進み、大きな会社に入って、良妻賢母な女性と…」という単一的な価値観が支配的だった時代と比べ、価値観が多様化した現代で「頭がよくなるパン」の打ち出し方は難しい。「勉強ができないのは悪なのか!」と怒られそうである。頭脳パンには、良く言えばレトロ、悪く言えば時代遅れな語感がある。
とは言え、最近はそうした商品が一周まわって支持を受けるケースは多い。グローバル化が進む一方、地域の土着性への関心も高まっていると思う。直営店ではハニーポットの商品を引き継ぐ一方、関東で売られる頭脳パンを期間限定販売するなど、話題化するための施策を考えれば、新たなヒット商品も生まれるのではないか、と勝手に考えている。