円安進行1ドル=140円/北陸からの海外駐在者「生活できない」?/日本円だけ保有リスクも

円安進行1ドル=140円/北陸からの海外駐在者「生活できない」?/日本円だけ保有リスクも

このところの円安進行の結果、ドル円レートは2022年9月に入って1ドル=140円台に乗せてきた。たまたま日本国内よりも東南アジアに多くの従業員を抱える金沢市内のメーカー社長と面会したら、興味深いことを聞いた。現地の駐在者が

「これじゃ、生活できない」

と言ってきたのだという。

その企業の海外駐在者は、給料を日本円のみでも受け取れるし、現地通貨のみでも受け取れるし、一定比率ずつでも受け取れるらしい。いま困っているのは、日本円で受け取る比率の高い社員だ。

例えば給料を日本円で「月50万円」受け取るとする。仮に日本円の価値が現地通貨に対して半分に変動したとすると、日本円で見た給料の金額は先月と変わらないのに、現地で買える物品は従来の25万円分に減る。

日本円、21年秋から2割の価値低下

では、足元の円安はどんな水準かと言うと、対ドルの日本円は1年前(2021年8、9月ごろ)の110円前後から20%ほど下がった計算になる。その企業が進出する国の通貨は、日本円に対してドルに近い動きをするそうなので、やはり2、3割の価値低下が起こっているそう。

岸田政権は業績が伸長する企業に3%超の賃上げを要請しているが、1年前から見て日本円の価値が20%下がっている現状から見ると、仮に賃金が3%上がっても「焼け石に水」というか、さほど意味をなさない。

しかし、仮に現地通貨に換算した給料が20%下がっても「生活できない」は大げさじゃない? 一瞬そう思うが、ここには為替影響に加え、経済発展と物価上昇も関係してくる。

貧乏になる日本/ビッグマックはタイ、ベトナムより安く

この企業が進出している国では、経済発展に伴って物価が高くなり、賃金も年5%ほどのペースで上昇しているという。

その社長が現地の日本人街に行った際、ラーメンと炒飯のセットは1,000円を軽く超えるし、近くの日系百貨店のレストランは1食1万円ほどなのに、いつ見ても現地人で盛況だそうだ。

日本人には「老後は物価の安い東南アジアで」「旅行先でブランド品を爆買い」みたいな時期もあっただろうが、今はそんな図式が成り立たなくなってきた。何となく満たされて生きているうちに周囲の国々が経済発展し、いつの間にか日本人は相対的に貧乏になったのである。

世界各国の購買力を比較するため、よく使われるのがマクドナルドの「ビッグマック」の価格だ。

ウェブサイト「世界経済のネタ帳」によると、日本のビッグマックは390円で主要国中41位であるのに対し、東南アジア各国はシンガポールが585円(18位)、タイが482円(33位)、ベトナムが406円(40位)。中国、韓国も日本より上にある。

ビッグマックの位置づけが市場ごとに異なる(「ファストフード」か「高級食」か、ということ)だろうから、筆者は必ずしもビッグマックの価格が各国の購買力を正確に示すとは思わない。それでも、タイやベトナムより安いのはショックな事実ではある。

本当に円預金だけ?老後ならアメリカ国債でも

これまで述べてきたように、仮に円預金だけを握りしめてゼロに近い利息を得ていても、日本円の価値自体が下がっているのだから、知らず知らず貧しくなる。

そう指摘すると「われわれは海外に行かないから」と言われるが、それは問題をはき違えている。円安や海外の物価高の影響は、輸入食品の価格やガソリン価格などを通じ、日本の家計に影響を与えるのだ。

そんな情勢下で、どのように資産を保有するか。

リタイア後なら、外貨で預金するか、値上がり・値下がりリスクの大きな株式よりも債券を買うべきだ。現役世代は金が足りなければ副業でもすれば良いが、収入が限られる老後は資産運用に失敗できない。例えば、アメリカ国債の年利は(期間によるが)3%超に上昇している。購入時に将来の受け取り金額が確定する国債で、物価高や円安の影響を和らげるのも良いかも知れない。

そう紹介した筆者に「アメリカも潰れる可能性はある」と言った人もいる。でも、仮に「アメリカ消滅」という世紀末的な日が来たら、その時は日本も消えているんじゃないか。日本円かドルか、株式か債券かという議論を超越した仮定だ。

毎日を生きていれば豊かになる日本は、もう存在しない。「昨日まで何とかなったから、明日も何とかなる。とりあえず様子見」は停滞の発想。その間も、世界は前進している。

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