株を買わなくても証券口座の開設を/進む円安、減る資産/円預金だけで大丈夫?

株を買わなくても証券口座の開設を/進む円安、減る資産/円預金だけで大丈夫?

2022年3月23日

2022年3月23日現在、為替は1ドル=120円前後をウロウロしている。年初は1ドル=100円近くだったから、この2カ月で随分と円安(ドル高)が進んだ。こんな時代、どうしたら資産を守れるか。一つの方法として証券口座の開設を勧める。ただ、株は買っても買わなくても、どちらでもよい。

※記事中の数字は何度か計算しましたが、もしも誤り等あれば、ご指摘ください。

「銀行に預けるだけで2倍に」

日本人の資産運用は円での預金が大多数を占めている。筆者が少年だった30年ほど前、定期預金が満期を迎えた案内ハガキを見た両親は「銀行に預けておくだけで2倍になった」と嬉しそうに説明してくれた。金よりカブトムシやサッカーに興味があった筆者も、なぜか当時の光景を鮮明に覚えている。

筆者は中学校時代に試行的に総合学習をやった世代だから、学校で金融教育を受ける機会はなかった。

大学は商学部だったので、利子率がどうしたこうしたという勉強はしたものの、テストが終われば全て忘れてしまった。そして社会人になって経済記者になり、ある時、気付いた。

「マヨネーズが3%値上げする。それなのに、給料は去年とほぼ同じ。預金の利息は数円。ということは、必死に働いても、相対的に貧乏になるじゃないか!」

そして2022年3月現在、円安の進行に加えて原材料・資源高のあおりで食品などが次々と値上げされている。その割に給料は上がらない。まさに当時より酷い状況だ。

「為替なんて関係ない」?

少し前までの筆者は、円安と聞いても「海外旅行なんて行かないから、関係ないな~」と考えた。おそらく、日本人には大なり小なり当時の筆者と似た意識があるだろう。

しかし、円安のインパクトは計算すると分かる。2022年初頭の状況をやや単純化し、1ドル=100円から120円になった場合を考える。円安方向に20%振れると、円の価値は16.7%下がる。ドルを持つ人から見れば、円しか持たない人は16.7%貧乏になるということ。それだけ外国からの輸入品は高く感じることになる。

為替手数料を無視すると、1,000万円で買えるドルは10万ドルから8万3,000ドルに減る。

この点、1ドル=100円時代に、1,000万円を5万ドルと500万円に分けたらどうなるか。

1ドル=120円になった時、500万円は416万円に価値が下がるが、5万ドルは600万円に増えて計1,016万円となる。円が安くなるインパクトをドルが高くなる影響が打ち消す格好だ。

もちろん、円高方向に振れる可能性もあるが、最後に1ドル=100円より円高になったのは2016年。米国が金融引き締め・利上げに動き始めたのに、日本はまだ金融緩和を継続中のため、金利が高い国の通貨が買われる原則に基づけば、この円安基調はそう簡単に反転しないだろう。

「値上がり+円安」が追い風に

さて、筆者の場合、金融資産を現金、日本株、米国株に3分の1ずつ投じている。筆者が持っている米国企業の株価は、このところ値上がり基調にあるが、それに為替影響が加わるので、円換算した資産は「値上がり分+円安の好影響」のダブルの追い風で増えている

もちろん「株=ギャンブル」という認識から、株式を買うことに抵抗がある人もいるだろう。そんな人も、証券口座があれば、スマートフォンの操作だけで円をドルに換えられる(その都度、手数料はかかる)。株を買わなくても、資産の一部をドルに換えて保有すればいいし、万が一、買いたい米国企業が出てきたら、すぐに買える。

銀行の預金金利が0.001%なのに、食品は一気に数%値上がりし、給料はなかなか増えない時代。少なくともネット系の証券会社は口座開設が無料なので、とりあえず開設だけでもしてみてはどうだろうか。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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