ビル・ゲイツ、バフェットが絶賛した伝説のビジネス書/「ビジネスで失敗する人の10の法則」

ビル・ゲイツ、バフェットが絶賛した伝説のビジネス書/「ビジネスで失敗する人の10の法則」

現在の地球上で最も成功しているビジネスマンの1人であろうビル・ゲイツ(マイクロソフト創業者)、ウォーレン・バフェット(投資家、バークシャー・ハサウェイCEO)がそろって絶賛したのが本書。

コカ・コーラ元社長の筆者ドナルド・R・キーオが、タイトルの通り「反面教師」の姿を通じ、ビジネスに対する望ましい姿勢を解説する。

控えめに言って、オススメ。

残念なのは2022年9月現在、新刊で出回っていないだろうこと。廃番ということだろうか。だとしたら再発売を強く願いたい。中古で買えるうちに、ぜひ購入を。

10の法則の概要まとめ

さて、10の法則(実際には11書かれている)を列挙した後、特に印象的だった幾つかの法則を紹介したい。

ちなみに、以下では本書で触れられる多数の事例を省いている。実際に読むと、豊富なケーススタディーが掲載されており、そこも読みごたえがある。

  1. リスクをとるのをやめる (最重要)
  2. 柔軟性をなくす
  3. 部下を遠ざける
  4. 自分は無謬だと考える
  5. 反則すれすれのところで戦う
  6. 考えるのに時間を使わない
  7. 専門家と外部コンサルタントを全面的に信頼する
  8. 官僚組織を愛する
  9. 一貫性のないメッセージを送る
  10. 将来を恐れる
  11. 仕事への熱意、人生への熱意を失う

①リスクをとるのを止める

「成功がもたらす病」というのがある。生活が楽になり、心が満たされると、リスクをとって変化を求めることをやめ、「満足と傲慢」が顔を出す。

重要な局面でリスクをとらなかったがために潰れた元優良企業は枚挙に暇がない。そして、人も企業も年齢を重ねれば重ねるほど、変化を嫌うようになる。

多少の計算間違い、見込み違いは、その時点でそれなりに高くついても、長く事業を続けるためのコストと考える。経営者は賢明にリスクをとり、将来を生き抜けるようにしないといけない。

②柔軟性をなくす

①に近いが、自分の流儀を確立し、成功に自信を持つと、他の方法が見えなくなる。

だから周囲の状況が変わったのに、頑固に自分の流儀を守り通そうとし、その結果、当然のごとく失敗する。

「T型フォード」は大衆車として大成功を収めた。同じ製品を大量に生産して低コスト化した車で、その魅力は「顧客はどんな色も選べる。それが黒でありさえすれば」という意味不明なアメリカン・ジョークで表現されている。

このフォードはその後、大衆の好みが多様化したことへの対応に遅れている。画一的であっても安く販売することが大衆の心をつかむ唯一の方法と妄信し、他の方向性を捨てていたからだ。

著者は指摘する。柔軟性はもちろん大事だが、柔軟性それ自体に価値はない。大切なのは、環境の変化への適応力を発揮することなのだ、と。

③部下を遠ざける④自分は無謬だと考える

「組織の進歩は全て問題解決の努力から生まれる」と著者は言う。だから、経営者は絶えず問題を把握するため、現場に近い部下の意見を聞き、任せないといけない。

ところが、何事かを成し遂げたと自負する経営者は、部下を遠ざけて批判を受け付けないようにする傾向がある。いつも自分は最高だと信じ、自分が間違えるはずはないと考えている(「無謬(むびゅう)」とは間違えないという意味)。

「自分は何でも知っている」と思っている経営者ほど、本当の周囲の状況が見えていない。多くの企業が、これらの法則のためにチャンスを逃してきた。

⑥考えるのに時間を使わない

データの時代になり、大量の情報が流れ込んで、それにストレスを受ける日々。情報を集めるのは必要だが、情報というのは多ければ多いほど良いわけではない。むしろ、大切なのは考える時間だ。

人は時に、見たいと思っているように見る。現実ではなく「自分の中で現実を示すと考えられる」データだけを見る。つまり、結論ありきで、それに符合するデータのみを集めてしまうということだ。マスコミによくみられる。

大切なのはデータを集めることよりも、正しい問いを立てること。そうしないと、正しい結論を得られない。事前に立ち止まって考える時間を確保しなければならない。

⑧官僚組織を愛する

組織では長い年月の間に規則や慣例が独り歩きしがちだ。組織内には次第に階層が増え、会議が増え、書類が増え、メールが増え、電話が増え、また会議が増える。縄張り意識が高まり、生産性は落ちる。組織は硬直的になり、あらゆる進歩を拒絶する。

著者は大企業における最大の課題の1つが不必要な官僚制をなくすことだと主張する。組織をとにかく複雑にすると、責任が極度に分散し、誰もが「誰かが間違いを見つけてくれる」と他力本願になる。

経営者やマネジメント層は従業員を細かく管理せず、むしろ尊重し、創造性を発揮できるよう励ますべきだという。

仕事への熱意、人生への熱意を失う

成功している人は自分の仕事に愛情を持ち、熱心に取り組んでいる。

情熱は伝染し、新しいアイデアや活力を生み出す。

しかし、時に「現実主義を自称する皮肉屋」から批判されることがある。「そんなこと無理だ」と。でも、それは単に安易な道を選ぶのが無難と言っているに過ぎない。情熱を帯びている人物は、その空気を一人で打破し、その情熱を伝染させる。

その「一人」には、誰だってなれる。さまざまな罠にはまる時もある。それでも抜け出そう。それでも、きっと失敗する。それでも抜け出そう。そしてまた、前進しよう。


以上でまとめを終える。

よく考えると当たり前の内容が多いが、当たり前のことを平然と口にすることは意外に難しい。最後に、今さら筆者が何か言うとしたら「この本を見かけたら、すぐに買え」の一言だけだ。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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