「構造的に強靭な企業」とは? 「教養としての投資」/奥野一成(ダイヤモンド社)㊦

「構造的に強靭な企業」とは? 「教養としての投資」/奥野一成(ダイヤモンド社)㊦

2021年10月20日

㊤で紹介した「構造的に強靭な企業を買う」のは、いったん買ったら売らないという前提だから、ちょっとした環境変化とは無関係に成長を続ける企業を選択する、ということだ。

㊤は以下のリンクから。

投資して名経営者に働いてもらう「教養としての投資」/奥野一成(ダイヤモンド社)㊤

初心者も中級者も楽しめる長期投資の教科書である。 2021年9月中旬以降、日本や…
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本書で「構造的に強靭な企業」を見つける際のヒントとして紹介されている項目は3つ。

  • 高い付加価値
  • 高い参入障壁
  • 長期潮流

数字や数値は基本的には過去のことしか語らない。

一方、株式にとって最も重要なのは未来のことだ。重視すべきは、未来に向け、どれだけの利益を生み出せるか、という見通しである。だから綿密な仮説を立て、そのシナリオを検証する作業が必要。そのために役立つのが上記の3つの項目である。

例えば、普通なら、今さら全世界でコカ・コーラの向こうを張って炭酸飲料を作ってシェアを逆転できるとは考えないし、ミッキーマウスに取って代わるキャラクターを生み出せるとは思わない。

簡単に言えば、簡単に真似されたり、無価値化されたりしない強いコンテンツを持っている会社は、ちょっとやそっとでは転ばず、むしろ新興国の経済発展や人口増に伴って、伸びしろがある、といった具合のストーリーだ。

つまり、高い付加価値を提供し、高い参入障壁がある会社とは、いずれかの分野で半ば独占的なポジションを築いてビジネスできている会社だ。

つくづく経営は参入障壁をつくるゲームであると思えてきます

5時限目・売らない株を買えばいい

そうやって利益を生み出し続けられる企業の株価は、長期的に見れば右肩上がりになる。

とは言え、短期的な上げ下げもある。だから、買うタイミングは分散させるのが好ましい。

高い競争優位性を持ち、しかも財務状況が優良な会社の場合、仮に相場全体が値下がりしても買い場だと捉えることができる。

なぜなら、市場が収縮して先に沈むのは競合企業だからであり、競争力の高い企業は一時的に業績が悪化したり、株価が下がったりしても生き残り、いち早く回復し、再び利益を得始めるから(このコロナ禍でも、コロナ・ショックで大きく下げた後、株価が早期にV字回復し、高値を更新した銘柄がいくつもあった)。

経営者や資本家のように考える

そういう意味で、株式投資を行う際は経営者や資本家のように考えることが大事になる。

銘柄選びは、企業が、いかに競争力のあるビジネスを持ち、無駄を削り、永続的に利益を出す仕組みを作っているかに焦点を合わせる作業の繰り返しだからだ。

それが上手くなると、手持ちの資金が複利効果で加速度的に増えていく状況を生み出せる。

それだけでなく、㊤で触れたように、時間や労働力をも分散的に投資し、自分の時間や労働力を複利効果で増やし続けることができるようになる。

だから「経営者のように考える」というのは、何も一部の個人投資家に限った話ではない。いま以上に成果を生みたいビジネスマン全般にかかわる話でもある。本書のタイトルに「ビジネスエリートになるための」と付いているのは、そうした思いからだろう。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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