富山県内に製造拠点を持っているYKK AP(東京)が、2021年10月1日付で「CHRO」なる職務を新設すると発表した。日本語にすると「最高人事責任者」ということらしい。
北陸では聞き慣れないこの役職。CEOやCIOは随分と市民権を得てきたが、また新たなアルファベットの登場である。今回は最高人事責任者という概念を紹介する。
YKK APの発表によると、CHROには松谷和男副社長が製造部門の担当者を外れた上で就任する。製造部門から、しかも副社長が就く当たり、同社がCHROを重要な役職と捉えていることは明らかだ。
それでは、最高人事責任者とは何か。CHROは 「Chief Human Resource Officer」の略で、直訳すれば人的資源を司る一番偉い人。 CHO(Chief Human Officer)の頭文字をとったもので、どちらも同義のよう。
これが従来の人事部長や総務人事部長とどう違うのか。
企業によって捉え方は異なるだろうが、YKK APのように副社長というトップマネジメントの1人が担う場合、その意味合いは大きい。企業全体の経営戦略に絡めて人的資源を見つめ、企業全体を成長させるために、どのような取り組みができるかを人事面から考える責任者ということだからだ。
単なる「管理者」ではない
つまり、やや概念的な言い方になってしまうが、単に「人事部門の管理者」というよりも「経営的な視点から人事部門を統括する人」という具合となる。
そうなると、組織的にはCHROまたはCHOの下に人事部長という中間管理職がいる建付けも不自然ではない。というか、普通にありそうである。
足元のコロナ禍で状況は変わっているが、ここ数年は人手不足が深刻化していた。しかし、長期的に見ると、この間に企業は省力化・省人化投資を進めてきたし、デジタル化の進行によって「頭数」という意味での人手の不足は解消の方向に向かっていくだろう。
そうなると、今度はデジタル化に対応できる、いわゆる「デジタル人材」の確保や育成が課題になってくるのは間違いない。
求める人材が高度になればなるほど、「人事」は日々の業務を回す歯車を探すというよりも、もっと経営戦略に近い部分で、エンジンになるような逸材を採用するか、育て上げることが重要になってくる。
そういう時代の前触れとして、CHROやCHOという制度の採用が増えてくるのかもしれない。