田中化学研究所が2023年1月27日に発表した22年4~12月期(第3四半期)の決算は、売上高が前年同期から1.5倍に増え、利益が4倍に高まった。ただ、23年3月期(通期)の業績予想は据え置いた。
売上高 | 営業利益 | 純利益 | |
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22年4~12月期実績 | 44,636(58.0) | 2,504(291.5) | 2,161(326.0) |
23年3月期(通期)予想 | 60,000(48.0) | 1,600(93.9) | 1,000(36.6) |
世界的なEV化の流れはあるものの、半導体不足などから自動車の生産は思うように進んでいない現状がある。そんな中、二次電池材を手掛ける田中化学は工場の稼働率が50%程度にとどまっている。そして、減価償却費や労務費といったコストが先行している。
それでも利益が伸びたのは、ひとえに製品の主原料であるコバルトやニッケルの国際相場が高水準で推移したため。第3四半期終了時点での営業利益25億円のうち、相場関係の利益は23億円だったらしい。
「たられば」に意味は薄いが、この相場関係の利益がなければ最終赤字だった可能性もあるわけか。ちなみに、今もって通期予想を上方修正しないのは、第4四半期(23年1~3月)の国際相場が見通しにくいからだという。
田中化学の発表によると、国際相場は前期の第4四半期から高水準になった。前期の第4四半期は今期の第3四半期までと同じぐらいになっている。1年ほど高止まりしている相場が下方に動けば、上記の通り、田中化学の利益は目減りする可能性がある。そうした背景から業績予想の修正を見送ったようだ。
こうして見ると、かなりの爆益に見えるものの、中身は「EV需要の高まりで稼働率が上がっている」という力強い状況ではない。自動車用の半導体不足は解消し始めていると聞くが、果たしてどうなるか。主原料の相場動向と併せ、不確実性の高い銘柄と言えそうだ。
※筆者は2021~22年に田中化学の株式を大量に保有し、だいぶ良い思いをしたが、ここ半年はEVを巡る方向感が分からないので保有していない