なぜだか手が伸びにくい書店、その理由は/「流行りの本」を買う気になれない

なぜだか手が伸びにくい書店、その理由は/「流行りの本」を買う気になれない

日常的にTポイントと楽天ポイントを集めているので、例えばイオンモール白山に立ち寄ると、意気揚々と「TSUTAYA BOOKSTORE」に入る。しかし、だいたいはモヤモヤした気持ちで手ぶらのまま店を出る。

その理由が何となく分かったので、書いてみる。

TSUTAYAで平積みされている本は、流行のジャンルが多い。最近のビジネス本なら「DX」「SDGs」「マーケター」「SNS」「FIRE」「デザイン」みたいなキーワードがタイトルに入ったものだ。

筆者の経験則では、そういう本の内容は3年ほど経てば「あ~、そんな本も売れてたね~」みたいに陳腐化してしまう。そして、開いた形跡のない本がブックオフに大量に並ぶ。

「今っぽい」は古臭くなる

そもそも、紙の媒体は世に出るまでのタイムラグが大きい。最も速報性の高い紙媒体だろう新聞も、発生から数時間は遅れる。だから、現代的な意味としては、やや割り切って普遍的なテーマや内容を扱うべきだと思っている。

そうした感覚で棚を眺めて「どことなく今っぽい風らしい」フワフワしたタイトルのついた本が平積みされているのを見ると、辟易とする。

「今っぽい」ということは、未来を基点にして見ると「古臭い」ということになるからだ。

時流に合わせて自分をどんどんアップデートする器用な人なら、そんな本もタメになるだろう。だが、多くの読者には「勉強した気になる」材料にしかならないと思う。

ただ、悲しいかな、すぐに役立つ具体的なノウハウを分かりやすく解説した本しか売れない時勢なのだろうから、作り手も売り手も責めるわけにはいかない。

そう思って溜飲を下げるが、売れ筋を並べるだけならインターネット書店で良い。本来、オフラインのリアル書店には「こんな面白い本があるのか!」という「偶然の」出会いを期待したいところだ。

かと言って、そんな本を店側が発掘し続けるのは大変だし、商業的に成り立つかどうか疑わしい。これからの書店って、どうあるべきだろう?考えるほど「モヤモヤ」が濃くなるところに、出版不況の根深さを感じる。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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