加賀屋が「日本のホテル・旅館100選」で2年ぶり総合1位/あっちでもこっちでも「トップ返り咲き」

加賀屋が「日本のホテル・旅館100選」で2年ぶり総合1位/あっちでもこっちでも「トップ返り咲き」

2022年12月11日

旅行新聞新社は2022年12月11日、第48回「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」の入賞施設を発表し、七尾市和倉温泉の「加賀屋」が2年ぶりに総合1位となった。個別部門では「もてなし」「企画」が1位、「料理」「施設」が2位だった。

加賀屋は2015年まで36年連続で総合1位で、2016年に3位へ順位を落とした。2017年に1位へ返り咲き、20年まで4年連続で1位だったが、21年は2位に甘んじていた。

「ホテル・旅館100選」は全国の旅行会社1万4,376カ所に投票用紙(専用ハガキ)を配布したほか、Web投票も受け付けた。9月21日~10月31日の投票期間に「もてなし」「料理」「施設」「企画」の各部門に優れる旅館・ホテルを推薦してもらった。

表彰式は2023年1月13日に都内で行われる。

7位にトップ10常連の「ゆのくに天祥」

「ホテル・旅館100選」7位にはトップ10常連の「ゆのくに天祥」(加賀市山代温泉)が入った。

加賀屋、ゆのくに天祥以外に北陸3県から総合トップ100に入ったのは、以下の施設。

39位 茶寮の宿あえの風(和倉温泉)

46位 日本の宿  のと楽(和倉温泉)

49位 まつや千千(あわら温泉)

63位 たちばな四季亭(山代温泉)

76位 加賀屋別邸 松乃碧(和倉温泉)

84位 グランディア芳泉(あわら温泉)

88位 川端の湯宿 滝亭(金沢犀川温泉)

加賀屋、もう1つの「返り咲き」で課題山積

さて、2年ぶりに「日本一」に輝いた加賀屋。おめでたい話だ。

だが、それをもって「めでたし、めでたし」ではないだろう、というのは衆目の一致するところ。加賀屋を巡っては50代の社長が退任して80代の父親がトップに返り咲くという珍妙な役員人事が繰り広げられている。

「られている」と現在進行形で書いたのは、当初は10月末に前社長が退任するのを前に後任人事を発表するとみられていたが、その後は音沙汰がなく難航しているとみられるからだ。

「お家騒動」の背景は

筆者は今回の「お家騒動」が親子の経営を巡る方針の違いからきたとみている。

過去の取材に想像を交えて書くと、前社長の與之彦氏は米国のホテルに勤務した経歴から分かる通り、昔ながらの旅館にホテルチェーン的な合理的な経営手法を持ち込み、現代的な「旅館チェーン」を志向していたフシがある。その1つの現れが、福井県あわら温泉の「つるや」取得だったのではないか。

一方、父の禎彦代表取締役(前相談役)は加賀屋を日本一の旅館に押し上げた功労者ではある。どちらかと言うと、とにかく大きな「箱」を構え、貸し切りバスに乗った団体客をごっそりと獲得し…という昭和時代の温泉街の在り様の中で生きてきた人だ。

この両者がぶつかれば、意見の相違が大きいのは当然である。今回の人事は、そのなれの果てなのではないかと思う。

マイナスのウワサ、後を絶たず…

関係筋によると、加賀屋の現状を巡ってはマイナス方向のウワサが後を絶たない。

このタイミングで詳細は書かないが、要は「社内外」が與之彦氏を中心とした未来を描き、体制づくりに進んでいたところ、急に「待った」がかかって数十年前に逆戻りする可能性が出たため、距離を置こうとする例が増えているということらしい。

しかも、週刊誌が加賀屋の「お家騒動」を取り上げたものの、その記事が地元マスコミと同じく一方的で手温いものだったことが、逆に関係者の不信感を呼んだ面がある。筆者も「これだけ?記者は温泉旅行ついでに書いただけじゃない?」との感想を持った。

いずれにせよ、課題は山積である。火のないところに煙はたたない。視界を遮る湯けむりもまた、火種が消えるまではくすぶり続ける。

加賀屋関連のまとめページは以下のリンクから

【まとめ】和倉温泉・加賀屋、突然の社長交代/小田與之彦氏が辞任、父の禎彦氏が復帰へ

2022年10月、七尾市和倉温泉にある日本一の温泉旅館「加賀屋」で、突然の社長交…
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国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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