津田駒工業、23年11月期「5年ぶり黒字」の超強気予想で時間外の株価が高騰!?/近年は下方修正を連発/そろそろ約束を守れるか

津田駒工業、23年11月期「5年ぶり黒字」の超強気予想で時間外の株価が高騰!?/近年は下方修正を連発/そろそろ約束を守れるか

2023年1月18日

津田駒工業(金沢市)は2023年1月18日、23年11月期の連結業績予想を発表し、18年11月期以来5期ぶりの黒字に転じると見通した。

この予想を真に受けた投資家が時間外取引で津田駒工業の株式を買っており、1月18日19時時点では同日終値より10%ほど高い600円台前半で取引されている。

まとめページは以下のリンクより

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直近7期、業績修正回数は平均2.8回

津田駒工業の予想のクセを把握するため、近年の通期業績に関する当初予想と実績の差を、営業損益と純損益で比べてみる(単位は百万円で▲はマイナス=損失を示す)。

分かりやすいよう、予想と実績のうち少ない方を赤字で示す。

営業損益16年11月期17年11月期18年11月期19年11月期20年11月期21年11月期22年11月期23年11月期
当初予想数値(A)4008001,0001,400100▲600▲1,100600
実績の数値(B)728622934▲228▲4,484▲3,723▲2,467
差額(B-A)+328▲178▲66▲1,628▲4,584▲3,123▲1,367
純損益16年11月期17年11月期18年11月期19年11月期20年11月期21年11月期22年11月期23年11月期
当初予想数値(A)2005508501,20050▲800▲1,100400
実績の数値(B)437183823▲594▲4,520▲4,495▲2,567
差額(B-A)+237▲367▲27▲1,794▲4,570▲3,695▲1,567

見ての通り、16年11月期に上振れした他は6期連続で予想を大きく下回った。海外経済の状況に振られる面があるので多少のブレは仕方ないが、特に19年11月期以降は数十億円単位で利益が下振れしている。

16年11月期~22年11月期は期中に業績予想を修正した回数が、順に3、3、1、3、4、3、3回で、年間平均は2.8回。これは全てが通期予想ではなく中間期予想のみを先に修正した回も含まれているので、通期予想の修正のみに絞ると、平均で年間2回ほどとみられる。

筆者は上場企業の業績予想を「株主と企業の約束」と捉えている。株主は企業側の情報を信じて投資するからで、企業側はなるべく精緻に予想し、状況が変わったらすぐに修正すべきだ。

この点、筆者は津田駒工業の当初予想を信じるお人好しはいないだろうと思っていたので、時間外取引の株価高騰にはかなり驚いた。今回と同じくギリギリの黒字を見通していた20年11月期は40億円超の大赤字に沈んだと言うのに…。

自己資本比率は9%に低下、純資産は31億円に減少

津田駒工業の2022年11月末時点の自己資本比率は9.1%で、前年同期から6.8ポイント低下した。

3年前の19年11月末時点は35.6%だったことを考えると、上に掲載した表にある通り、直近の大きな赤字が自己資本を食い潰している様が分かる。

22年11月末時点のBSを見ると、利益剰余金は114億円以上のマイナス(前年同期は88億円のマイナス)。一方で資本金が123億円、資本剰余金は24億円残されており、差し引きの純資産はプラス31億円となっている。

津田駒工業が主要ターゲット市場の1つとしている中国は、ゼロコロナ政策を転換したものの新型コロナの感染が急拡大し、いつ再び極端な抑制策が発動されるか分からない。「万が一」23年11月期も赤字になれば、その金額によっては債務超過に陥る可能性すらあるだろう。

「たられば」ばかりで恐縮だが、上の表を見ていただければ、結論ありきのネガティブ予想ではないと分かっていただけると思っている。


まあ、総務部長が外出や直帰ばかりの統治体制だしね…(詳しくは下記リンクの過去記事を参照)。

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国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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