「サイバーエージェント」という会社名を聞くと、今なら「ABEMA(アベマ)」が真っ先に思い浮かぶが、筆者のように30代後半だと「アメブロ」という人も多いと思う。
この本を読み進めている最中、今さら思い当たったのが「あれ?サイバーエージェントってIT企業なのに、創業者の藤田晋さんって、エンジニアじゃないんだな…」ということ。本書を読めば分かるが、そもそもは起業家志望の営業マンだったのだ。
だから、なのかも知れない。本書では、インターネットという世界中の人々の生活を一変させる技術が広がる過程で、それにチャンスを見出して「21世紀を代表する会社をつくる」と立ち上がった若者の苦闘が、平易な言葉遣いでつづられている。
企業内起業みたいな形で独立し、事業を急成長させるが、その成長に社内が追い付かない。金も尽きかける。それでも、はったりや見栄で乗り切り、やがて現実が追い付く。
以前、NIKE(ナイキ)創業者の伝記「SHOE DOG」を読んだ際にも、似た雰囲気を感じた。
スタートアップ期には精緻で理論だったビジネスプランよりも「はったりや勢いで自転車操業ながら突っ走る」みたいな一見メチャクチャな姿勢こそが必要なのかも知れない(もっとも、これは生存者バイアスを度外視した考えだが…)。
本書の中にはホリエモンこと堀江貴文さん、楽天の創業者の三木谷浩史さんらも登場。2000~2010年ぐらいにブイブイ言わせてたIT企業の雰囲気が、その渦中にいた1人の起業家の視点で書かれている。
読者の年齢によっては随分と昔の話だと感じられるかもしれないが、それでも学べる点はあると思う。
インターネット市場がまだまだ出来あがってない時代、その他大勢に先んじて一歩を踏み出した人々の息遣いや行動、思考方法を知ることは、いつかまた社会に大きな波が押し寄せた時の肥やしになるのではないだろうか。
文庫版なら値段も安いし、オススメの書籍です。