富山県内で次世代型電動車椅子「WHILL」の販売が開始 / 免許自主返納の高齢者らの利用見込む

2021年7月23日

ホンダ系自動車ディーラーのホンダ自販タナカ(富山市)は、次世代型電動車椅子「WHILL Model C2(ウィル モデル シー ツー)」の販売を始めた。WHILLは軽量、分解可能な電動車椅子で、自動車運転免許を自主返納した高齢者らの利用を見込む。

WHILL Model C2。オシャレな外観となっている(出典・WHILL公式ホームページ)

WHILLは誰もがシームレスに近距離を移動できる社会を実現するため、2012年に設立されたベンチャー企業。

これまで「車椅子」と言うと、障害者や高齢者が使うものというイメージが強かっただろう。しかし、幅広い世代を取り込むため、Model C2は写真の通り、デザインが秀逸。

カラーも9色(ホワイト、グレー、ブラック、レッド、ライトグリーン、ピンク、ライトブルー、パープル、ゴールド)と豊富にある。これは女性や障害を持っていない層の獲得に向けて大きな武器になりそう。左右で違う色にもできるようだ。

1回5時間の充電で18kmを走行できる。バッテリーは簡単に着脱できるから、充電時はバッテリーだけ外して屋内に持ち込み、ケーブル経由でコンセントに接続しておけばよい。この点はコンセント近くまで移動しなければならない電気自動車と比べると便利ではないか。

パーツは4種類。前輪、後輪、シート、バッテリーで、数分あれば分解したり、組み立てたりできる。大きさを見る限り、分解すれば、特殊車両ではなくとも、ハッチバック型の車などに乗せて運べる。

前輪、後輪はいずれも重量10kg台後半なので、高齢者が一人で組み立てるのは難しいかもしれないが、方法自体は非常に簡単なので口頭で説明できる範囲と思われる。付き添いに若い人がいればできるだろう。

販売価格は47万3,000円

ここでスペックの概要を確認してみる。

最高速度6km/h最小回転半径76cm
サイズ55cm×98cm×74~94cm段差乗り越え5cm
重量52kg最大荷重115kg
WHILL資料より作成

最小回転半径の小ささから考えると、通常の商業施設内なら問題なく動き回れそうだ。最近はイオンモールもどんどん巨大化しており、一定以上の年齢の人からすれば、館内移動用にも使える。なんでも、空港内の移動などでは実際に使われているそうだ。

ちなみに生活防水なので、多少の小雨なら壊れないそう。

販売価格は47万3000円。オプションで幾つか機能を加えられるが、基本的に初期費用のみで、ランニングコストは充電時の電気代だけのようだ。もっとも、まだ発売からそれほど時間の経っていない商品なので、経年により何か弱点が見えてくるかもしれないが…。

なぜ、自動車ディーラーが売るの??富山、福井でも発売済みだが、石川「また」出遅れ

では、どうして自動車ディーラーが車椅子を販売するのだろうか。

地元紙によると、冒頭にもある通り、免許を自主返納した高齢者とのつながりを保つためらしい。

思えば、今「シニア」と呼ばれる人たちは若い頃から大量消費社会に浸かり、バブル経済を経験した。車に対する意識も、今の若者と比較にならないほど高い。若者の車離れが指摘される中、そうした上客が車を「卒業」していく状況は、自動車ディーラーとして危機的状況なのだろう。当座の危機をしのぐ方法としての一つの解ということか。

「ちょっと〇〇さんの家まで将棋を打ちに行ってくる」みたいな、ちょっとした外出には重宝しそうだ。北陸でどこまで根付くのか、楽しみである。

ただ、一つ気になることが…。今回の富山に先立ち、既に福井でも販売が始まっているという。でも、石川県は未対応。

この図式、どこかで見たな。そう、トヨタの水素自動車「MIRAI(ミライ)」である。北陸三県では富山に続き、2021年に入って福井でも商用水素ステーションが整備された。既に富山ではそれなりの台数が走っているようだが、ここでも石川は完全に出遅れている。

なぜ、こういう先進的なものの取り入れに、必ず出遅れるのだろう。いまだに「我らは加賀百万石。伝統を重んじる」という頭の高さからだろうか。伝統を大事にするのは大いに結構だが、新しいものを上手に活用できる地域にならないと、いずれは社会から置いていかれそうで気がかりである。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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