自動車部品メーカーの田中精密工業(富山市)の子会社タナカエンジニアリング(同)が、自動車部品などを手掛けるアイシン軽金属(射水市)に、自社開発の無人搬送車(AGV)を納入した。
AGVは溶けた軽合金を金型内に充填する「ダイカストマシン」16台、中間置き場、熱処理炉6台の工程をつなぐ受け渡し作業を自動化する。
タナカエンジニアリングのAGVの特長は車載センサーの情報を活用し、AGV自らが他のAGVとの衝突を避ける点にある。
通常、複数台を運用する場合は交差点でAGV同士がぶつからないよう、全体を監視する集中制御システムが必要。そのため、同社のAGVを使えばシステム投資を抑えながら搬送作業の効率化が図れるらしい。
注目すべきはプレスリリース中にある「更なる高効率化を図るため、運航指示を自動で行うシステムの追加受注をいただいており、2022年3月導入に向けて推進しております」という記述か。単に機械数台を納入しただけではなく、今後の継続的な取引につながりそうである。
それにしても、なぜ、今回の話が大きな意義を持つのか。その説明に移ろう。
アイシン軽金属って、どんな会社??
アイシン軽金属は射水市に本社を置き、自動車部品を主力に各種アルミ製品を製造している。従業員は1,667人(2021年4月1日時点)で、北陸の中では大規模な会社だ。
大株主は1位がアイシン(愛知県刈谷市、55%を保有)、2位がトヨタ自動車(40%)で、アイシングループ各社が5%を保有している。アイシンは筆頭株主がトヨタで、売上高の3割はトヨタから得ている。実質的にトヨタグループの一角と言える。
アイシン軽金属のホームページを見ても、主要取引先としてはトヨタ、ダイハツ工業、アイシン、デンソー、ジェイ・バスなどトヨタ系の各社が掲載されている。
一方、田中精密工業は筆頭株主が持ち株比率24%(2021年3月期末時点)の本田技研工業(ホンダ)となっている。
今村証券(金沢市)のレポートによると、田中精密は全社売上高に占めるホンダやホンダの関連会社向けの比率が76.3%(21 年 3 月期)の高さだという。
つまり、今回のAGV納入を俯瞰して見ると、これまで売上高の多くをホンダ向けが占める田中精密が、全世界的なEV化の流れで本業のエンジン部品に陳腐化の危機が迫る中、新製品でトヨタ系の会社に食い込んだ、ということを意味するだろう。
28日は田中精密の株価が高騰
だからこそ、田中精密の株価は28日の市場で高騰した。
前営業日の終値613円に対し、28日は値幅制限いっぱいの100円高の713円まで買われ、一時ストップ高となった。前場(≒午前中)のうちにストップ高の水準からは下がったが、それでも14時時点で、44円(7.18%)高い657円をつけている。