ユニクロ、2024年3月3日に香林坊東急スクエアから撤退/進出した14年前以降の香林坊の変遷をまとめてみた/3月22日には金沢フォーラスに新店

ユニクロ、2024年3月3日に香林坊東急スクエアから撤退/進出した14年前以降の香林坊の変遷をまとめてみた/3月22日には金沢フォーラスに新店

アパレルチェーンの「ユニクロ」が金沢市の旧市街地から撤退し、金沢駅前に進出することになった。2024年3月3日、香林坊東急スクエア3階で営業してきた既存店を閉める半面、3月22日には金沢フォーラス4階に新店をオープンさせる。

長文になっているが、今回の件が持つ意味を筆者なりに考えた。お付き合いいただければ幸い。

香林坊で13年半/当時を振り返ってみる

香林坊のユニクロができたのは2010年9月のこと。つまり、13年半の間、この地で営業していたことになる。

13年半前というのがどれぐらい昔なのかを把握するため、当時の香林坊周辺にあって今はない・形を変えたものを整理してみよう。

香林坊109、ラブロ片町、金沢パティオ…

当時の「香林坊東急スクエア」は館名が「香林坊109」だった。筆者の記憶では、渋谷109と似たベクトルで若い女性をメインのターゲットにしていたように思う。

数区画隣には、もともと百貨店の大和だった「ラブロ片町」(2014年に閉館)が営業していた(解体後の2015年に「片町きらら」がオープン)、書店「うつのみや」は現在の香林坊東急スクエア地階ではなく、柿木畠の「柿木畠本店」として営業していた(2016年に移転)。

その「うつのみや」があった場所は、今や関西電力系の分譲マンションがある。近くには大和ハウス工業、プレサンスコーポレーションの真新しい分譲マンションも建っている。2010年当時はいずれも無かった。

竪町通りの「金沢パティオ」(現・CoCoTTo KANAZAWA)には、メインテナントとしてスペイン発のファストファッション「ZARA」があった(現在のCoCoTToは物販店が古着屋1店のみで、上層階には簡易宿所が入って何とか体裁を保っている感じ)。

片町から香林坊、南町、武蔵ヶ辻にかけてのエリアは、今やホテルがたくさんあるが、2010年当時、それらの多くは存在しなかった。

もちろん、北陸新幹線は長野駅までしか通っておらず、東京へ行くには越後湯沢駅で乗り換えていた。

こうして振り返ると、随分と昔に思える(そして、こんな記事の書き方をしてしまう自分を「歳をとったなあ」という目で見てしまう)。

もう中心ではない「中心部」?

香林坊・竪町・片町エリアはもともと、金沢だけでなく北陸の住民がショッピングを楽しむ中心地という役割を果たした。広坂には石川県庁と金沢市役所があり、名実ともに「金沢市中心部」だった。

ところが、県庁は金沢駅西へ移転し、商業機能は衰えた。石川県内の地価の最高地点は香林坊から金沢駅前に交代した。今なお同エリアを「市中心部」と呼ぶメディアも一部あるが、筆者としては既に市役所がある以外に何の「中心」でもないと思う。

商業機能の衰退については諸々の理由があり、さまざまなところで言われているので深入りしない。表面的には金沢駅前にできた商業施設「金沢フォーラス」(2006年11月オープン)の開業やイオンモールが各地にできたことが原因と言われる。

しかし、本来の原因はもっと根深く、ビジネス環境や顧客ニーズの変化に対応できなかったからだろう。

旧市街地は駐車場が有料で、段差だらけのためベビーカーで通行しにくい。建物は多層階だから買い回りが面倒くさい。各施設は中途半端な規模なので他の施設に寄る必要があるが、道中は風雨にさらされる。

その逆が大型ショッピングモールやインターネット。若者は手頃な店で楽に普段の買い物を済ませ、たまに自分ならではの尖った商品がほしい。そんな趣向は、それらを組み合わせれば充足できる。

もちろん、旧市街地にも品ぞろえや店づくりで独自の価値を生む店やビルもある。しかし、街全体としては現状維持バイアスに支配され、旧来の客層が老いるのとともに街が老いているように見える。そして、若者は旧市街地を訪れる習慣を持たないまま大人になっているのが、今。

たぶん、しばらくしたら全て緑地化されるのだろう(下のリンクご参照)。

【妄想?】進む「金沢旧市街地空洞化計画」とは/緑地に次ぐ緑地/目指すは比較不能な「オンリーワン都市」?

※金沢の未来について抱く大きな危機感を覆い隠し、フザけて自虐的に書いてます。フィ…
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1店を出したら1店を引っ込めるユニクロ

こうして「中心部」の凋落を見た上で、ユニクロの話に戻ろう。

先日、以下のリンクにある記事を書いた。記事中のマップから分かる通り、北陸におけるユニクロは既に店舗網の整備が完了している感じがある。

【難易度☆☆☆】北陸3県、アパレルチェーンの勢力図をつくってみた/これはスーパー、ドラッグストアよりややこしいかも…

ここ最近、試みに北陸3県のスーパーマーケットやドラッグストアの店舗数を立て続けに…
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たとえば、北陸で店舗の拡大期にある「無印良品」は富山県東部(富山市より東という意味)に1店もないし、能登も宝達志水町止まり。まだ出店余地がありそう。一方、ユニクロは一定の距離感や人口ごとに店を構えており、新規出店地を探すフェーズを卒業したように思える。

だから「香林坊東急スクエアの閉店」「金沢フォーラスの開店」をセットにして店舗数を調整しているのだろう。小松店が閉店する際、筆者が「いずれイオンモール新小松に出店するだろう」と書いたのも、上記の理由からだ。

こうした冷静な自己認識能力を持つユニクロが、満を持して旧市街地から金沢駅前へ移る意味は大きい。…というのが、今回これだけの長文を書いた背景にある。

どんな街として生きていくのか

いつも書いているが、緑地やホールなど、旧市街地に既に十分あるものを「増やせ」という近視眼的な意見なんて無視すれば良い。まずは目指す街の形を示すグランドデザインを策定しないと。もう手遅れかも知れないけれど…。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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