金沢スカイビル建て替え、地権者の半数が「態度保留」の深刻さ / 地元紙は「半数超が希望」と煽るが…

金沢スカイビル建て替え、地権者の半数が「態度保留」の深刻さ / 地元紙は「半数超が希望」と煽るが…

2022年5月24日

2022年5月24日付の北國新聞朝刊によると、百貨店「金沢エムザ」などが入る「金沢スカイビル」の管理組合の意見交換会で、地権者24人(社)のうち半数の11人(社)が建て替え・改修に対する態度を保留した。

長く商売を続けるなら建て替え・改修は避けられないが、意見を明確にしない地権者が半数いるあたりに、同ビルが抱える問題の深刻さを感じる。

北國新聞によると、管理組合は地権者に対し、21年11月の臨時総会で建て替えを提案した。金沢スカイビルは老朽化が進んでおり、現在の耐震基準を満たしていないほか、毎年毎年、多額の修繕費がかかっているからだ。

ところが、それから半年がたった今、ビルの今後に関する考え方を尋ねるアンケート調査に、地権者24人のうち6人が回答せず、5人が「分からない」としたということだ。

一方で「建て替えを検討すべき」は9人、「耐震化を含む改修を検討すべき」は4人にとどまった。

この点、北國新聞は「半数超が建て替え、改修希望」と大きく報じているが、筆者としては極端に忖度(そんたく)しすぎた内容だと思う。

見え隠れする地権者の温度差

例えば、築30年のマイホームを抱える59歳。窓にガタがきてスキマ風が入り、小さな地震でも家がきしむ。この場合、平均寿命まであと20年はマイホームで生きると思ったら、普通はサッシを入れ替えたり、柱を補強したりしようとするだろう。資金的な余力にもよるが「ま、いいか」と放置する方が不自然なはずだ。

ここで、想像を交えて言う。

北國新聞の記事ではエムザの社長が「このビルで10年先も営業するのは難しい。建て替えをしないと」と熱弁を振るっているが、半数の地権者は「そもそも、そんな先の将来なんて見てないよ…」という消極的な雰囲気なのではないか。

それが「未回答」6人、「分からない」5人という結果に現れている。「耐震補強」にすら前向きではない人が半数いるのだから、もはや長きにわたって不特定多数の買い物客を迎えようという気概が薄れているのだろうと察する。

以前、下記リンクのような記事を書いた。エムザにツタヤブックストアを入れるというプランに「超大型のものならともかく、今さら半端なものなら効果はない」と記した。

複雑な「今夏、エムザにツタヤブックストア」/金沢の百貨店改装「終わりの始まり」か

2022年3月1日付北國新聞の朝刊に「金沢エムザにツタヤ」という記事が載ったのを…
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この過去記事を読んだ知り合いの不動産会社の社長が連絡をくれた。「おっしゃる通り。そもそも書籍離れの流れがあり、郊外に大きな書店がある中、ちょっとした書店を増やしても、客層の広がりにはつながらない」

筆者なら2フロア「ぶち抜き」で北陸最大のツタヤにするとか、1階の化粧品を他の階に追いやり、ショーウィンドウを活用して開放感のある「オープンブックカフェ」みたいなツタヤにするなど、思い切った施策を打つ。しかし、残念ながら、この間に、エムザ3階の一部に入るのみになるということが分かっている…。

運営側は3階にツタヤを入れることに新鮮味を感じているのかも知れないが、通行人からしたら地権者の半数が建て替え・改修を考えるような、変わり映えのしない老朽ビルのままである。

そもそも「百貨店」というものに足を運ぶ習慣がなくなってきている。それなのに従来の枠を出られず百貨店然とした姿勢を見ると「仮に建て替えても、新しいハコと莫大な借金が残るだけで、何ら状況は変わらないのではないか…」という「半数以下(=少数派)」と烙印が押された地権者たちの憂慮が聞こえてきそうである。

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国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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