クスリのアオキが「ようやく」PB商品を開発 / 2021年8月に4商品を発売

クスリのアオキが「ようやく」PB商品を開発 / 2021年8月に4商品を発売

2021年8月21日

北陸を地盤にドラッグストアを展開するクスリのアオキ(白山市)は2021年8月21日、プライベートブランド(PB)商品を発売する。ドラッグストアのみならず、生鮮品などで食品スーパーとも競合する中、コストを抑えられるPB商品の開発により、価格競争力を高める狙いがあるとみられる。

(出典・クスリのアオキ公式ホームページ)

PBの名前は「A&(エーアンド)」。クスリのアオキ全店で取り扱うという。

PBのブランドコンセプトは「毎日、ずっと」「あんしん品質」「なっとく価格」。残念ながら、正直、このコンセプトには別段の真新しさを感じさせない。

日本経済新聞電子版によると、とりあえずは料理酒やハムなど4商品がラインアップされている。料理酒とみりん風調味料はワダカン(青森県十和田市)と、ハムとベーコンは日本ハムと共に開発したという。

日常的に使う、使用頻度の高い商品から出しているところからすると、来店頻度を上げたり、これまで何となく習慣で食品スーパーに寄っていた層の足を向けさせたりする狙いがありそうである。

アオキは価格が高い??

ドラッグストアや食品スーパーのチェーンでは、とうの昔から自前のPB商品を持つのが当たり前になっていた。簡単に言えばPB商品は自社が開発から携わる分、利益率が良く、類似の市販品と比べて値段を下げても通常以上に利益が出る。それでいて製造元は市販品と同じような食品メーカーなわけで、PB商品は消費者にとっても店側にとっても好ましい存在だ。

それなのに、アオキはPBで出遅れてきた。確かにイオンのPB「トップバリュ」の商品は置いているが、おそらく幾らかはイオン側にマージンを払うだろうから、価格競争力を100%高める結果にはつながらない。

「Yahoo!ファイナンス」の掲示板などを見ていると、アオキの価格が競合他社と比べて高いとする指摘が散見される。

石川県内のドラッグストア市場ではもともと、主立った競合と言えば、シメノドラッグかコメヤ薬局ぐらいしかなかった。そこに近年、ドラッグコスモス、スギ薬局、Vドラッグ、ゲンキー、ウエルシアなどが次々と侵攻してきたアオキは地場企業として先行者優位を築ける立場だったはずだが、新たに参入してきた他社の勢力拡大を許してしまった。

「ガラパゴス」から抜け出せるか

地域内では後発の他社に押された背景は何だろう。

それは上記の価格の高さかも知れないし、ポイントサービスの出遅れかも知れない。消費者からすれば、薬はどこで買っても中身は同じだから①近所にある②他店より安い③ポイントが貯まる、ぐらいしか店を選ぶ基準はない。

そんな中、目立った競合がないまま成長し、ある意味で石川県流に「ガラパゴス化」したため、強い外敵と戦う力を養えなかったのではないかと感じている。

もっと口を悪く言えば、それら弱みから目を逸らすために、他の地域にどんどん店を出し、ひたすら規模の拡大を求めたように見える。その結果がどうなったかは、コロナ禍でドラッグストア業界全体が盛り上がり、その反動減が出た今年、売り上げが競合より伸び悩んでいる(むしろ、既存店ベースでは伸びていない)ことに現れたと思う。

今回、遅まきながらPB商品に参入したのは意味がある。4品を加えただけで短期的に売り上げが爆増して形勢が逆転するはずはないが、これからアイテム数を増やしていけば、PBの売り上げが他の商品の値下げ余力に与える好影響も出てくるはず。そういう意味で、これは上手くすれば、反転攻勢の第一歩にもなりうる。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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