人口減少や部数・客数低迷は「課題」じゃなくて「現象」/徒労に終わらないために

人口減少や部数・客数低迷は「課題」じゃなくて「現象」/徒労に終わらないために

課題」という言葉は便利で、何となく「ちゃんと考えてる感」を出せるフレーズだと思う。だが、そもそも「課題」を誤って設定しているケースは多い。

先日、ライター業でインタビューした相手が「課題と現象は間違えがち」と言っていた。世界トップクラスの大学院を出た賢い人だった。数日間、その意味を考え、ようやく理解できたと思ったから筆をとっている。

例えば、新聞社の課題は「発行部数の減少」ではなく、百貨店の課題は「客数の減少」ではない。

それらが課題なら、解決策は「3カ月無料キャンペーン」「ポイント2倍デー」などになる。しかし、それらを実行しても、新聞は4カ月目に解約され、百貨店は逆に2倍デーじゃない日が閑散とする。そして「まあ、活字離れ(百貨店離れ)だから」と自らを慰める。

本当の課題はユーザーにフィットする商品・体験を提供できていないことだ。もしくは、そのズレに気付かないこと。結局、そこを解決しないと、状況は根本的に好転しない。そういうものこそが、見据えるべき「課題」と言える。

「人口減少」は単なる現象?

人口減少や高齢化が課題だとすれば、解決は簡単だ。外国人の若者を1億人連れてきて日本国籍を与えれば、人口は2倍に増え、若返りが進むから。

でも、この結論に疑問を持たない人はいないだろう。

実際に向き合うべき課題は、若者が安心して子を生み、育てられる環境がないことだ。人口減少や高齢化はその結果として生じた現象に過ぎない。それならば、必要な解決策は国内経済や企業業績の安定、産休・育休の取得が不利にならない仕組みづくりや意識改革になる。

女性の管理職比率や選挙の投票率が低いことも「課題」ではない。女性が働きやすい環境がなく、関心を持てる政治が存在しないことが本質的な課題だ。

表面的な綻びを課題と誤認すると、根本解決にならない対処療法に汗を流すことになってしまう。「頑張ってるアピール」をするならそれで良いが、ただの徒労にコストをかけないため、本当の課題はどこにあるのか見極める努力を忘れてはいけないと思う。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、北國新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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