前田工繊(坂井市)の子会社で、ホイール製造のBBSジャパン(高岡市)が、F1の統一ホイールを独占供給する見通しとなった。
日本経済新聞が報じた。
記事によると、自動車レースの最高峰「F1」や米国のレース「NASCAR(ナスカー)」が初めて導入する統一ホイールとして採用されることに決まった。期間はF1が4年、ナスカーが3年という。
14日に開幕する自動車ショー「東京オートサロン」で発表するらしく、既に契約を結んだとされている。
前身は「ワシマイヤ―」
さて、BBSジャパンは、もともと、1971年に高岡市で設立されたアルミ製糸巻きビームの製造販売会社「ワシマイヤー」が前身。74年、同社は小型プレス機を使い、素材を回転させながら連続して鍛造する技術を開発し、高品質な鍛造アルミ製品を作れるようになった。
1980年代に入り、ドイツのBBS社は設備投資を抑えて鍛造アルミホイールを作るため、他社との技術提携を模索。視察に訪れた日本で、繊維業の先行き不安から多角化を狙っていたワシマイヤーの上記技術に出会い、提携が決まった。83年、BBS社とワシマイヤーが技術提携して日本BBSが誕生した。
その後は「世界初」と冠が付く製品を次々と世に送り出した。この辺りは同社の歴史や製品の説明を見ても、正直に言って、素人には何が凄いのか分からない。
1991年には鍛造アルミホイールの出荷が累計100万本を突破した。92年にはF1用のマグネシウム鍛造ホイールを世界で初めて開発した。フェラーリチームの躍進を支え、そのおかげで、国内自動車メーカーのOEM供給も増えた。金型の内製化にも着手した。
2000年にはF1チームの半数が採用
2000年ごろにはF1チームの半数がBBS製マグネシウムホイールを履いており、BBSのホイールを使うフェラーリチームのミハエル・シューマッハは、04年まで5年連続でチャンピオンになった。
ただ、多くのチームに採用されることと、経営がうまく運ぶことは必ずしもリンクしない。2010年、ドイツのBBSが経営破綻した。12年には、ワシマイヤーと他のグループ会社は会社更生法の適用を申請。前田工繊は2013年、ワシマイヤー株式会社の全株式を取得し、商号を現在のBBSジャパンに変更した。
19年には高岡市に塗装工場を建設。1万2000トンの鍛造プレス機を導入。24インチのホイールを量産できるようになった。
F1に採用されること自体はそれほど大きな収益を生まないだろうが、宣伝効果は大きい。世に数多(あまた)あるホイールメーカーの中で、頂点に位置する品質と認められたことの証でもあるからだ。
前田工繊の株価は11日午前、前日終値と比べて一時245円(6.6%)高い3925円をつけた。