成功のためには「成功を忘れろ」?/「ユダヤ人大富豪の教え」/本田健 ㊤

成功のためには「成功を忘れろ」?/「ユダヤ人大富豪の教え」/本田健 ㊤

2022年3月10日

全ての社会人にオススメする。

今は経営コンサルタントや作家として活躍する著者・本田健氏が、20歳の頃に渡米して出遭ったユダヤ人の老人、ゲラー氏のもとで1年間を過ごした経験をまとめた本。お金や社会、ビジネス、そして自分に対してどう向き合うか、というテーマで伝授された17の教えを紹介している。

内容は最近出版されているマネー本やビジネス書に通ずる内容が多い。そのため、それらの書籍をあまり読まない人には「とりあえずの1冊」としてオススメ。一方、それらの書籍をよく読む人にも無価値ではなく、ふと心を打つワードや一節に出遭える本であるため、オススメしたい。

17の教えは以下の通り(一部の表記を修正)。

  1. 社会の成り立ちを知る
  2. 自分を知り、大好きなことをやる
  3. ものや人を見る目を養い、直観力を高める
  4. 思考と感情の力を知る
  5. セールスの達人になる
  6. スピーチの天才になる
  7. 人脈を使いこなす
  8. お金の法則を学ぶ
  9. 自分のビジネスをもつ
  10. アラジンの魔法のランプの使い方をマスターする
  11. 多くの人に気持ちよく助けてもらう
  12. パートナーシップの力を知る
  13. ミリオネア・メンタリティを身に着ける
  14. 勇気をもって決断し、情熱的に行動する
  15. 失敗とうまく付き合う
  16. 夢を見る
  17. 人生がもたらす全てを受け取る

このうち、内容が秀逸な幾つかをピックアップし、㊤㊦の2回で要約を記したい。

【要約】成功は受けた応援の結果

成功と言うと、素晴らしいものに聞こえるが、必ずしもそうではない。後述のように、成功したからと言って「幸せ」になれるかどうかは分からないからだ。

「幸せな成功」をしたければ、いったん、お金や成功のことを忘れ、物事の本質を見る目を養い、自分らしい人生を生きることに集中しなければならない。

では、本質とは何か。

例えば、ビジネスなら「提供したサービスの量と質=受け取る報酬」という考え方。普通は受け取る給料など、もらえるものにばかり目を向けるが、本来は「与えること」にこそ気を配らないといけない。多くの人に喜んでもらえれば、その分だけ多くの対価を得る、ということ。

ここで、自由人と不自由人というモデルを考えてみる。

 自由人  = 経済的、社会的、精神的に独立し、自分の考えるように生きる

 不自由人 = 経済的、社会的、精神的に誰かに依存し、自分が何をしたいか分からない

不自由人は自分の労働力を提供することで給料を得る。会社員や公務員はもちろん、自営業者や医師、弁護士など。手帳には「やらなければいけないこと」が大量に書き込まれているのが特徴だ。

このうち、意欲的な会社員はスキルアップのため簿記やコンピューターを学ぶ。

しかし、会社は個人がどれだけ頑張っても、ほぼ平等に利益を配分するため、収入に大きな差は生まれない。本書では、こうしたスキルアップに向けた努力を「より優秀な不自由人になるためのトレーニング」と断ずる。

医師や弁護士は学校の勉強に一生懸命だった半面、お金の勉強が乏しい傾向がある。そのため、高い報酬を受け取ると「ご褒美」とばかりに生活水準を引き上げる。

いったん生活レベルを引き上げると、落とすのは難しい。彼らの報酬の源泉は「自らの労働」なので、現状を維持するためだけに、自分に酷使されることになる。

自由人は店のオーナーや作家、地主、配当収入を得る投資家など。彼らは労働力の対価として金を受け取るのではなく、アイデアによって成功を得る。アイデアは自分1人の労働力でできないぐらい大きなことを可能にするからだ。

本書は言う。

 現在の世の中は経済価値や喜びを与えた人間が豊かになるようになっている

成功は受けた応援の結果。だから、まずは利益優先の姿勢から距離を置き、他人から信頼される必要がある。その上で、自分らしい人生を見つけることが「幸せな成功」への常道だという。

とは言え、この「自分らしく」というのを、多くの人は見つけられないもの。本書では「自分らしい人生」として、自らを知って「好きなこと」をやることを勧める。

「好きなこと」をやる

「好きなこと」とは、仮に周囲が評価してくれなかったとしても、楽しくて時間を忘れて没頭してしまうようなことだという。周囲に認められることを主眼に置くと、その時点で「自分らしさ」は実現しない。他人のために生きるようなものだからだ。

当たり前だが、好きなことをしていると前向きな姿勢になる。手帳には「やらなければならないこと」ではなく「やりたいこと」が書き込まれ、クリエイティブなアイデアが湧く。そのアイデアが誰かの満足を得る時、自分は豊かになる。本書では言う。

子どもにしてやれる最大の贈り物は、自分が好きなことをやって生活する姿を見せること

その人が普段から持っている考えが、その人の人生をつくる。だから、日ごろから自分が何を感じ、何を考えているかに意識を集中させ、何を好きなのかを探らなければならない。

この点、高い教育を受けた人ほど目先の損得で物事を考えてしまい、自分の欲求に気付かない。その結果、忙しいけど満足感に乏しく、ただただ生活するために働く「不自由人」になる。

居酒屋で同僚と共に職場のグチばかり言い、自分たちは能力や貢献度に比して報われないと慰め合っているのは、この手の人たちだ。

嫌な仕事、嫌な会社を続ける必然性は、どこにもない。すぐに辞めればいい。

㊤を終えるに当たり、本書の中でも有数の衝撃的な一文を紹介しよう。

夢を追いかけるのを忘れ、安定した人生を選んだ人間は「退屈な人生を生きる終身刑」を自ら科しているに等しい

こう聞いてなお「そうは言っても…」が口をつく人は、明日も明後日も終身刑の「おつとめ」に励めばいい。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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