成功のカギは最初の客づくり/セールスは「何もしない」 /「ユダヤ人大富豪の教え」/本田健 ㊥

成功のカギは最初の客づくり/セールスは「何もしない」 /「ユダヤ人大富豪の教え」/本田健 ㊥

2022年3月15日

レビュー記事の2本目は人脈についての記述をまとめる。

「成功への考え方」に関する記述をまとめた㊤は以下のリンクから。

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知り合い300人が2,700万人に化ける

物やサービスを売る過程で、相手に感謝されて応援されることで、喜びを知って経済的に豊かになる。これが優秀なセールスマンのサイクルだ。

さらに「最高のセールスマン」は何をするか。本書は次のように紹介する。

最高のセールスマンは一切セールスしない。(中略)いちばん大変なのは最初の核となる客をつくることだ。いったんこのシステムが稼働すると、何もしなくていい。

これは解説が必要だろう。

本書によると、人間は知り合いがせいぜい300人しかいない。まず自分の知り合い300人と、しっかりとした信頼関係を築く。自分の「応援団」にまで関係を深めた最初の300人(第1世代)にも300人ずつの知り合いがいるとすると、第2世代までで自分の見込み客は9万人にもなる。

では、その9万人に各300人の知り合いがいたら、第3世代までの潜在顧客は何人になるだろうか。なんと2,700万人である。

もっとも、自分から離れるほど影響力は弱まるので、第1世代と第3世代では自分に対する関心の度合いが異なる。大切なのは既存の知り合いとの関係を強固にすることこそ、長期で円滑に仕事を進める鍵になる、ということ。

「最高のセールスマン」のAさんが構築するシステムというのは、知り合いBさんと強い信頼関係で結ばれた結果、Bさんが知り合いCさんに「〇〇で困っているならAさんがオススメだよ」と自動的に宣伝してくれる仕組みのこと。

だから単純な人数も大切だが、ひとりひとりとの関係の深さがもっと大事。その意味で「最初の核となる客を増やす」ではなく「つくる」という表現になっているのだろう。

偉い人には、その人が偉くないかのように接する

上記のシステムの作り方とは別に、本書は立場の違う人への接し方も紹介している。

本書で言う「人脈をつくる」とは「重要な位置づけの人と対等に、礼儀正しく付き合うこと」を指す。本書は言う。

へりくだってセールスマンのようになってはいけない。あくまでも自分の尊厳を守った付き合いをする。相手によって態度を変えない在り方を見て、相手はひとかどの人物と思い込む。

これに関し、筆者(国分)は思い当たる節がある。

新聞社時代の上司に、大企業には異常な低姿勢で接して口を開けばヨイショの嵐の一方、小さな企業には横柄な態度で無理難題を吹っ掛ける人がいた。

大企業には書いた原稿のうち一部を(本来はダメなはずだが)「お目通し」し、修正を反映して掲載していた。その上司は「信頼関係はこうして培うんだ」と得意気だった。

ところが、後日、筆者が独りでその大企業を取材した際、相手方が上司の名前すら間違って覚えていて失笑した。

無意味に下手(したて)に出る必要はない。自分には自信も価値もないと喧伝して歩くようなもの。上の例で言えば、相手にとっては信頼できる人ではなく「言いなりに動く便利なヤツ」に過ぎなかったわけだ。

それでは、どのように他人と応対すればいいか。本書は「偉い人には、あたかもその人が偉くないような気持ちで」「偉くない人には、あたかも偉いような気持ちで」と説く。

筆者の経験では、経営者は孤独で、在籍期間が長くなると知らず知らず周囲がイエスマンばかりになる。そこへ20、30代の若造がインタビュー取材に行き、相手の発言を受けて随分と生意気な持論を差し挟んだところ、意外に好感された。その証拠に、今回、独立した筆者にいろいろと声を掛けてくれているのは、そうやって接してきた取材相手だ。

以上、本書に出てくる「人脈」「人付き合い」の類の主張をまとめると、人脈とは、むやみに知り合いの数を増やして構築するものではなく、まずは既存の知り合いとの関係を深め、自分の応援団をつくることに始まる。

人はそれぞれ立場があり、自分より目上の人もそうでない人もいる。それによって態度をコロコロ変えるのではなく、あくまで自分の尊厳を保ち、相手に敬意を払って対等な姿勢で付き合うことが大事ということだ。

国分 紀芳

国分 紀芳

1985年生まれ。石川県出身。慶應義塾大学商学部を卒業後、地元新聞社に入社。キャリアの大半を経済記者として過ごす。2022年2月に独立・起業した。

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