JR西日本グループは18日、富山駅南口に開発した商業施設「MAROOT(マルート)」と「ホテルヴィスキオ富山」をグランドオープンした。
18日は平日で、朝から小雨が降り続いたが、大勢の買い物客でにぎわった。開店直後は手指を消毒して入館するための長い行列ができていた。
テナント一覧や各店の紹介はマスコミや他のサイトが詳しいと思うので、いくつか気になったポイントと考察をつづってみる。
まず印象的なのは1階部分のほとんどが「食」関連のテナントになっていることだ。鋳物の「能作」やクリーニングの「ヤングドライ」などもあるにはあるが、多くは地元業者を含むカフェやバー、スイーツ店で、特に惣菜店が並ぶ一角はデパ地下がそのまま1階にやってきた、という感じ。
1階西側には「マルート・ザ・スーパー」というエリアがある。
ここは精肉の「グランマルシェタケダ」、鮮魚の「魚廣」、青果の「FRESH Mart365」、食品のセレクトショップ「HOKUYA」の専門店4店が軒を連ねている。この4店はレジ業務を共有化しており、あたかも1つの店のようにして運営している。
もちろん、最初のうちは買い物客も戸惑うだろうと思うが、18日時点ではスタッフがしっかりとレジまで誘導していた。慣れてくれば、複数の店の会計を1カ所でできるメリットを大きく感じられるだろう。
ざっくりと言うと、2階はアパレルとコスメ、生活雑貨が中心。メインは向かいのマリエとやまから移転した「無印良品」だ。店を移すに伴い、面積を3倍に増やした。3階は「LOFT(ロフト)」やニトリの「凸ホーム」を中心とした生活雑貨、靴、エステなど。4階は書店と飲食店がメインだ。
コロナ禍でテナント集め苦心も、おおむね埋まる
このコロナ禍では、不要不急の外出を控えることが求められた。その影響で、特に大きな打撃を受けた業界の1つが飲食、アパレルだった。そのため、コロナ禍での開業準備では、出店交渉が難航し、テナント一覧の発表は当初予定より遅れた。
中には、いったんは出店が決まり、店名が発表されたものの、後に取りやめた店もあるようだ(過去のプレスリリースと付き合わせれば分かるはず)。だから、グランドオープン時に数区画の空きがあるものの、おおむね埋まっているあたりに、関係者の苦労と努力が垣間見える。
郊外施設と一線画し、通勤・通学客と周辺住民に照準?
マルート内を1周して思ったのは「都会の駅ビルみたい」。JR西グループがやっているから駅ビルっぽくなるのは当然で、むしろ「都会の」というところがミソ。
これまで富山駅前では地元住民の買い物場所の「マリエとやま」があり、遠来客向けの「きときと市場とやマルシェ」があった。ところが、マリエは老朽化し、郊外に大型商業施設が幾つもできた今、比較すれば、施設の規模、内容とも中途半端な感じが否めなかった。
マリエは現在、リニューアルに向けた準備が進むが、基本はマルートがマリエの後継施設とみていいだろう。そのマルートは都会の駅ビルにあるようなアパレル店やカフェ、雑貨店を中心に、馴染み深い地元業者を混ぜたテナント構成。遠来客が珍しがるというより、主に地元住民の利用を想定していることが分かる。
さらに、マルートの売り場面積は約1万2,000㎡。とやマルシェと関連施設は計3,000㎡ほど。1万㎡ほどのマリエの改装が終わっても、計約2万5,000㎡。富山市郊外の商業施設「ファボーレ」が7万㎡近くあることから考えると、広さで勝ち目はない。
実際、無印良品やロフトはファボーレ店より小さく、置いてあるアイテム数は少ないように思えた。
この点、一定金額以上を買わないと駐車場が無料にならないことからも、マルートのメインターゲットは、地元住民の中でも、週末に車で買い物に行って買い込む人ではなく、通勤・通学で日常的に富山駅を使う人、買い物場所が少ない富山駅周辺の人になるだろう。ちょっとした時間に頻繁に立ち寄ると想定すると、1つ1つのテナントが大きいことより、テナント数が多く多彩な方が施設の価値は高くなる。
そうした意味で、マルートはマリエの機能を踏襲・拡張し、郊外施設と真正面から競い合うというより、ターミナル駅周辺を行き来する人たちの生活に「+α」をもたらすタイプの施設であると言えそうだ。